脳卒中急性期管理シリーズ

脳出血急性期の
血圧管理と降圧目標

なぜ140未満を目指し、110未満を避けるのか【INTERACT / ATACH-2】

医師・医療従事者向け解説 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]対応
脳神経内科医 今村
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KEY TAKEAWAY

脳出血の血圧は、どこまで下げるべきか?


本日の結論

発症早期は「速やかに SBP 140 mmHg 未満」を目指す。

ただし「110 mmHg 未満への過度な急速降圧」は避ける。

脳梗塞の permissive hypertension(下げない)とは真逆の病態生理です。

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AGENDA

本日の流れ


1

なぜ脳出血では早期に下げるのか(脳梗塞との対比)

2

2大臨床試験の結論(INTERACT2 vs ATACH-2)

3

最新ガイドライン推奨と「140」の二面性

4

急性期実務(ニカルジピン・変動性・凝固中和)

5

慢性期・二次予防への接続(130/80未満)

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CHAPTER 01

第1章

なぜ脳出血では早期に下げるのか

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PATHOPHYSIOLOGY

病態生理の根本的な違い


脳梗塞(虚血)

Permissive hypertension(下げない)
閉塞血管周囲の虚血ペナンブラを救済するため、側副血行路の灌流圧を維持する。

脳出血(出血)

Active Bleeding(早期に下げる)
破綻血管からの活動性出血を止め、早期の血腫拡大を阻止するため速やかな降圧が必要。

脳出血では虚血ペナンブラが存在しないため、過度な低血圧を避ければ降圧が安全です。

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HEMATOMA EXPANSION

発症早期の血腫拡大が生命予後を直撃する


38%

発症3時間以内の脳出血患者の約38%で、
24時間以内に実質的な血腫拡大(>33%または>6mL)が発生する。

血腫拡大が生じた患者では、死亡リスクが約5倍(OR 5.0)に跳ね上がる(Davis 2006)。

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CHAPTER 02

第2章

どこまで下げるか 2大試験の結論

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CLINICAL TRIAL 01

INTERACT2:収縮期 140 未満目標の有効性と安全性


対象 2,839例(発症6h以内、SBP 150-220) Anderson CS et al. NEJM 2013
積極降圧群(目標 SBP < 140)

90日後 mRS 順序シフト解析で良好な機能回復へ有意にシフト(OR 0.87, p=0.04)

標準降圧群(目標 SBP < 180)

死亡率・重篤有害事象に有意差なし(積極降圧の安全性を確立)。

血腫増大率も積極降圧群で低値傾向を示しました。

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CLINICAL TRIAL 02

ATACH-2:過度な急速降圧(110未満)の害と無益性


対象 1,000例(発症4.5h以内、ニカルジピン静注) Qureshi AI et al. NEJM 2016
超積極降圧群(目標 110〜139)

死亡・重度障害(mRS 4-6)は 38.7% vs 37.7% で予後改善効果なし

腎有害事象の有意な増加

7日以内の腎イベントが 9.0% vs 4.0%(p=0.002)と有意に増加。無益性中止。

下げすぎ(110〜120未満)は臓器灌流障害を引き起こすことが示されました。

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SYNTHESIS

2大試験から導かれる実務目標


UPPER LIMIT

目指すべき上限

収縮期 140 未満
血腫拡大を防ぐため、速やかにこの域まで下げる。

LOWER LIMIT

避けるべき下限

110〜120 未満
急速な過度降圧は腎障害等の臓器虚血を招く。

TARGET WINDOW

安全な目標域

130 〜 140 mmHg
実務上はこの狭い安全ゾーンの平滑な維持を目指す。

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CHAPTER 03

第3章

最新ガイドライン推奨と「140」の意味

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GUIDELINES

国内外のガイドラインにおける降圧推奨


日本 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]

発症早期の脳出血に対し、収縮期血圧 140 mmHg 未満を目指す速やかな降圧が勧められる(推奨度 B)。

AHA/ASA 2022 ガイドライン

SBP 150-220 mmHg では 目標 140 mmHg が安全かつ妥当(Class 2a)
ただし SBP < 130 mmHg への過度な急速降圧は有害の可能性あり(Class 3: Harm)。

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CONTRAST

脳梗塞と脳出血で「140」の意味が逆転する


脳梗塞(血栓回収後)

「140」は避けるべき底(下限)
回収成功後に 140 mmHg 以下へ過度に下げることは避ける(推奨度 E)。

脳出血(発症早期)

「140」は目指すべき天井(上限)
血腫拡大を阻止するため、140 mmHg 未満を速やかに目指す(推奨度 B)。

同じ「140」という数値でも、病態により「下限」か「上限」かが正反対になります。

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CARE BUNDLE

INTERACT3:包括的ケアバンドルの証明


7,036例の大規模ステップウェッジRCT(Lancet 2023) 6か月機能予後改善(aOR 0.86)
① 早期降圧
SBP < 140
② 血糖管理
110-140 mg/dL
③ 体温管理
< 37.5 ℃
④ 凝固中和
直ちに中和

単独の降圧だけでなく、4要素を束ねたプロトコル介入が転帰を改善します。

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CHAPTER 04

第4章

急性期の実務ポイントと血圧変動性

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PRACTICE

急性期の実務:薬剤選択・変動性抑制・抗凝固中和


DRUG OF CHOICE

ニカルジピン持続静注

第一選択。0.5〜6 µg/kg/分(2〜10 mg/h)で開始し、シリンジポンプで漸増・漸減。

VARIABILITY

血圧変動性(BPV)の抑制

血圧のばらつきが大きいと予後不良オッズが 1.41倍(Manning 2014)。急降下・スパイクを避ける。

REVERSAL

抗凝固薬の緊急中和

ワルファリン→ケセントラ+Vit K、ダビガトラン→イダルシズマブ、FXa阻害薬→オンデキサを直ちに併用。

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SECONDARY PREVENTION

慢性期は 130/80 未満の厳格管理へ移行


慢性期目標血圧

診察室 < 130/80 mmHg / 家庭 < 125/75 mmHg

脳アミロイド血管症(CAA)や多発微小出血(CMBs)合併例においても、
再出血予防のエビデンスが確立している唯一の介入は厳格な降圧治療です。

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SUMMARY

持ち帰ってほしい3つのポイント


1. 早期に「SBP 140 mmHg 未満」を目指して速やかに降圧する

2. ただし「110〜120 未満」への過度な急速降圧は避ける(腎障害回避)

3. ニカルジピンで血圧のばらつきを抑え、抗凝固中和を併用する

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