なぜ140未満を目指し、110未満を避けるのか【INTERACT / ATACH-2】
発症早期は「速やかに SBP 140 mmHg 未満」を目指す。
ただし「110 mmHg 未満への過度な急速降圧」は避ける。
脳梗塞の permissive hypertension(下げない)とは真逆の病態生理です。
なぜ脳出血では早期に下げるのか(脳梗塞との対比)
2大臨床試験の結論(INTERACT2 vs ATACH-2)
最新ガイドライン推奨と「140」の二面性
急性期実務(ニカルジピン・変動性・凝固中和)
慢性期・二次予防への接続(130/80未満)
CHAPTER 01
Permissive hypertension(下げない)
閉塞血管周囲の虚血ペナンブラを救済するため、側副血行路の灌流圧を維持する。
Active Bleeding(早期に下げる)
破綻血管からの活動性出血を止め、早期の血腫拡大を阻止するため速やかな降圧が必要。
脳出血では虚血ペナンブラが存在しないため、過度な低血圧を避ければ降圧が安全です。
発症3時間以内の脳出血患者の約38%で、
24時間以内に実質的な血腫拡大(>33%または>6mL)が発生する。
血腫拡大が生じた患者では、死亡リスクが約5倍(OR 5.0)に跳ね上がる(Davis 2006)。
CHAPTER 02
90日後 mRS 順序シフト解析で良好な機能回復へ有意にシフト(OR 0.87, p=0.04)。
死亡率・重篤有害事象に有意差なし(積極降圧の安全性を確立)。
血腫増大率も積極降圧群で低値傾向を示しました。
死亡・重度障害(mRS 4-6)は 38.7% vs 37.7% で予後改善効果なし。
7日以内の腎イベントが 9.0% vs 4.0%(p=0.002)と有意に増加。無益性中止。
下げすぎ(110〜120未満)は臓器灌流障害を引き起こすことが示されました。
収縮期 140 未満
血腫拡大を防ぐため、速やかにこの域まで下げる。
110〜120 未満
急速な過度降圧は腎障害等の臓器虚血を招く。
130 〜 140 mmHg
実務上はこの狭い安全ゾーンの平滑な維持を目指す。
CHAPTER 03
発症早期の脳出血に対し、収縮期血圧 140 mmHg 未満を目指す速やかな降圧が勧められる(推奨度 B)。
SBP 150-220 mmHg では 目標 140 mmHg が安全かつ妥当(Class 2a)。
ただし SBP < 130 mmHg への過度な急速降圧は有害の可能性あり(Class 3: Harm)。
「140」は避けるべき底(下限)
回収成功後に 140 mmHg 以下へ過度に下げることは避ける(推奨度 E)。
「140」は目指すべき天井(上限)
血腫拡大を阻止するため、140 mmHg 未満を速やかに目指す(推奨度 B)。
同じ「140」という数値でも、病態により「下限」か「上限」かが正反対になります。
単独の降圧だけでなく、4要素を束ねたプロトコル介入が転帰を改善します。
CHAPTER 04
第一選択。0.5〜6 µg/kg/分(2〜10 mg/h)で開始し、シリンジポンプで漸増・漸減。
血圧のばらつきが大きいと予後不良オッズが 1.41倍(Manning 2014)。急降下・スパイクを避ける。
ワルファリン→ケセントラ+Vit K、ダビガトラン→イダルシズマブ、FXa阻害薬→オンデキサを直ちに併用。
診察室 < 130/80 mmHg / 家庭 < 125/75 mmHg
脳アミロイド血管症(CAA)や多発微小出血(CMBs)合併例においても、
再出血予防のエビデンスが確立している唯一の介入は厳格な降圧治療です。
1. 早期に「SBP 140 mmHg 未満」を目指して速やかに降圧する
2. ただし「110〜120 未満」への過度な急速降圧は避ける(腎障害回避)
3. ニカルジピンで血圧のばらつきを抑え、抗凝固中和を併用する