医知創造ラボ

脳梗塞急性期の血圧は
どこまで下げるか

再灌流療法の有無で変わる、降圧の判断

医師向け監修:今村久司所要 約8分
今日のテーマTODAY'S POINT

急性期の高血圧は、
下げるべきか、下げざるべきか

結論

分かれ目は再灌流療法をするのか、したのかです。
そして再開通したあとは、下げすぎないことのほうが重要になりました。

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この動画でわかることAGENDA
1
なぜ判断が割れるのか
2
再灌流療法を行う場合
3
再開通後は下げすぎない
4
再灌流療法を行わない場合
5
内服再開と二次予防
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CHAPTER 01

CHAPTER

01

なぜ判断が割れるのか

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ガイドラインの読み方TWO RECOMMENDATIONS

同じ指針の中に、逆向きの推奨があります


場面推奨されること推奨度
再灌流療法を行わない降圧は勧められない推奨度D/高
血栓溶解療法を行う185/110 mmHg 未満へ降圧推奨度A/低

脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕。推奨度とエビデンスレベルは別の軸です。

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病態生理AUTOREGULATION

虚血巣では、
灌流圧が血圧そのものになります


急性期の虚血巣では脳血流の自動調節能が破綻し、
脳灌流圧が全身血圧にそのまま依存します。

📋 ここが判断の分かれ目

血圧を下げれば、ペナンブラの灌流も一緒に落ちます。
一方で高すぎる血圧は、出血性変化と脳浮腫を助長します。

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CHAPTER 02

CHAPTER

02

再灌流療法を行う場合

KEY NUMBER
185/110mmHg

血栓溶解療法の適応可否を分ける、
降圧療法後の血圧の線

rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針 第三版(2019年3月・追補2023年9月)

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時間軸で変わるBEFORE & AFTER

投与前と投与後で、見る数字が変わります


時期血圧の扱い測定間隔
投与前185/110 mmHg 未満へ下げてから開始
投与後 2時間まで180/105 mmHg 以下を保つ15分ごと
投与後 2〜8時間180/105 mmHg 以下を保つ30分ごと
投与後 8〜24時間180/105 mmHg 以下を保つ1時間ごと

rt-PA適正治療指針 第三版 表13。血栓回収療法のあとも、アルテプラーゼ投与後の管理に準じます。

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実務の整理DRUG TABLE

使う薬と、注意すべき点


薬剤持続静注の用量注意点
ニカルジピン0.5〜6 μg/kg/分頭蓋内圧亢進例では要注意
ジルチアゼム5〜15 μg/kg/分徐脈・房室ブロック・洞停止
ニトログリセリン5〜100 μg/分(要遮光)耐性が生じやすい

脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕表14。
用量と目標値の最終判断は、各施設のプロトコルと添付文書に従ってください。

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COMMON MYTH

その 185/110 は、何のための数字ですか


脳梗塞急性期は 185/110 mmHg を目標に降圧する

185/110 は血栓溶解療法の
適応可否を分ける線です。
降圧の目標値ではありません

再灌流療法を行わない症例の考え方は、第4章で扱います。

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CHAPTER 03

CHAPTER

03

再開通後は下げすぎない

KEY NUMBER
140mmHg

血栓回収療法の最中と回収後に、
収縮期血圧を下回らせない目安

脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕(推奨度E・エビデンスレベル中)

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回収後の強化降圧EVIDENCE

強化降圧は、利益を示せませんでした


試験強化群の目標主要な結果
ENCHANTED2/MT120 mmHg 未満mRS OR 1.37(1.07–1.76)
OPTIMAL-BP140 mmHg 未満良好転帰 39.4% 対 54.4%
BEST-II140/160/180無益性の基準を満たさず
BP-TARGET100–129 mmHg頭蓋内出血 42% 対 43%

目標はいずれも収縮期血圧。mRS はシフト解析、良好転帰は mRS 0–2。
ENCHANTED2/MT と OPTIMAL-BP は安全性のため早期中止。

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META-ANALYSIS
0.81RR

強化降圧群で機能的自立に至る割合の比
95%信頼区間 0.67–0.98

Ghozy S, et al. JAMA Netw Open. 2024(血栓回収後の4試験1,571例のメタ解析)

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HOW TO READ

「差が出なかった」を、どう読むか


差が出なかったのだから、強化降圧をしても構わない

BEST-II は第2相で、無益性の基準を満たさず

BP-TARGET は頭蓋内出血に差がなく、
低血圧が 8% 対 3% でした

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CHAPTER 04

CHAPTER

04

再灌流療法を行わない場合

KEY NUMBER
220/120mmHg

これを超えて持続する場合に、
慎重な降圧を考慮する目安

脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕(推奨度C・エビデンスレベル低)

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再灌流なしの降圧NO BENEFIT

下げても、転帰は変わりませんでした


試験降圧の程度主要な結果
CATIS24時間で 9.1 mmHg 差死亡・高度障害 OR 1.00(0.88–1.14)
SCAST7日目 147 対 152血管イベント HR 1.09(0.84–1.41)
メタ解析3か月の不良転帰 RR 1.04(0.96–1.13)

CATIS n=4,071/SCAST n=2,029/メタ解析は13試験 12,703例。
SCAST の common OR 1.17 は、事前設定の有意水準 0.025 に届きませんでした。

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EXCEPTIONS

それでも手を出す場面があります


大動脈解離・急性心筋梗塞・
心不全・腎不全の合併では慎重に
著しい低血圧と循環血液量減少は速やかに是正する(推奨度A)
血糖は 180 mg/dL 未満を目安とする
昇圧薬による人為的高血圧はルーチンに行わない
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CHAPTER 05

CHAPTER

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内服再開と二次予防

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もとの降圧薬RESTARTING

再開は、24時間以降に考慮します


もともと飲んでいた降圧薬は、神経症状が安定していれば
発症24時間以降に再開を考慮します。

📋 急いで再開する利益はない

ENOS では継続群と中止群で90日転帰に差はありませんでした(OR 1.05)。嚥下障害があれば、内服自体が危険です。

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DECISION FLOW

まず再灌流療法の有無で分ける


再灌流療法を行う/行ったか 行う 行わない 投与前 185/110 未満 投与後 180/105 以下 220/120 までは 積極的に下げない 回収後も収縮期 140 を下回らせない
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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰りポイント


01
再灌流をしないなら下げない

220/120 mmHg を超えるまで降圧しません。

02
するなら下げる、ただし 140 は割らない

投与前 185/110 未満、
回収後は 140 を
割りません。

03
内服は24時間以降に再開を考慮

症状が安定していれば、もとの薬を戻します。

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参考文献・出典

この動画の参考資料

[1]

日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕
改訂項目. 2025.

[2]

日本脳卒中学会. rt-PA(アルテプラーゼ)静注療法 適正治療指針
第三版. 2019(追補2023).

[3]

Prabhakaran S, et al. Stroke. 2026;57(8):e316-e436.

全19件の参考文献は、概要欄のブログ記事に掲載しています。

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⚠️

ご視聴にあたってのお願い

この動画は医療従事者向けの一般的な情報提供
であり、個別の診断・治療方針を
示すものではありません。
実際の判断は患者の状態と各施設のプロトコルに基づいて行ってください。

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