外来患者指導シリーズ第33弾

お酒、やめなくていいです

外来10分でできる、減酒サポートの組み立て方

医知創造ラボ 監修:今村久司(脳神経内科・総合内科専門医)
今日の結論TODAY'S CONCLUSION

外来でまず聞くのは、
どれくらい飲みますか

結論
  1. 「やめられますか」で始めない。まず量を数える。
  2. 減酒でいい。「40g/20gに届いたか」で効果を判定しない。
  3. 「今日から一滴もやめます」を、そのまま帰さない。
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導入WHY IT'S HARD TO ASK

「お酒の量」の話は、
切り出しにくい


患者にとっても医師にとっても、気まずい話題です。だからこそ、聞き方を先に決めておきます。

  • 依存症が疑われる者(AUDIT 15点以上・推計)は304.1万人(令和6年)
  • 実際に治療を受けているのは、外来10.9万人・入院2.5万人(令和4年)
  • 多くが「治療を受けていない」まま、日常の外来に紛れている
📋 外来で変わること

「断酒できないなら専門医へ」で、会話を終わらせない

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① まず、量を数えるJ1 純アルコール量の式

純アルコール量は、
この式で計算する


摂取量(ml)
×
度数/100
×
0.8(比重)
=
純アルコール量(g)
500ml
×
5%/100
×
0.8
=
20g

ビール500ml(5%)の場合 — 1回60g以上の一時多量飲酒は避ける

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① 誤解を正すNOT A LICENSE TO DRINK

男性40g・女性20g、
「飲んでいい量」ではない

1生活習慣病のリスクを高める量

男性40g以上・女性20g以上(厚労省・第3期計画)

2下げていく出発点

ここまで飲んでよい、という意味ではない

「これらの量は個々人の許容量を示したものではありません」(厚労省)
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② 誰を拾うかJ3 表6 AUDIT-C

3問だけでいい、
AUDIT-C


質問見るポイント
①頻度飲酒の頻度(週4回以上で高得点)
②量1回に飲む量(1ドリンク=純アルコール10g)
③多量飲酒の頻度6ドリンク(60g)以上飲む頻度
📋 カットオフ

3問の合計点数が男性5点以上・女性4点以上でアルコール依存症を疑う(学会の手引き)

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③ 目標を置くJ3 4.1 / 4.2

目標は
「断酒」でなくていい


治療目標対象
断酒入院が必要/生活が困難な問題がある/臓器障害が重篤/緊急の離脱症状(幻覚・けいれん・振戦)がある
飲酒量低減軽症で明確な合併症がなく、患者が断酒を望まない場合
📋 迷ったら

飲酒量低減がうまくいかなければ、断酒に切り替える(学会の手引き)

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③ 効果判定学会の手引き / Witkiewitz 2017

「届いたか」で
判定しない


男性40g・女性20g以下に届いたかどうかで判定する

治療開始時より飲酒量が下がり、健康障害や社会・家族問題が軽減すれば効果ありと判断できる

Witkiewitz K, et al. Alcohol Clin Exp Res. 2017;41(1):179-186.(COMBINE二次解析)

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④ 何をさせるかJ1 行動5項目

主役は、
心理社会的治療


まず、飲酒日記をつけてもらいます。

  • 自分の飲酒量を把握する(飲酒日記・AUDITの活用)
  • あらかじめ量を決めて飲む
  • 飲酒前・飲酒中に食事をとる
  • 飲酒の合間に水を飲む
  • 週に飲まない日をつくる
📋 薬の位置づけ

治療の主体は心理社会的治療。薬物治療は補助的な役割(学会の手引き)

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④ 正直に伝えるKaner 2018 / Kuwabara 2022

効果は、正直に言うと
小さい


「一言かけたら劇的に減る」わけではありません。

  • 海外の系統的レビュー(69研究):1年後の飲酒量は週20g少ない程度
  • 長く話しても、効果の上乗せはわずか
  • 国内の職域研究でも、5分の助言だけでは有意な変化がなかった
📋 それでも

外来で繰り返し声をかける価値はある

Kaner EF, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2018;2(2):CD004148. / Kuwabara Y, et al. Alcohol Clin Exp Res. 2022;46(9):1720-1731.

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⑤ 薬の位置づけJ3 表4

減酒目標の薬は、
ナルメフェンだけ


治療目標位置づけ
断酒アカンプロサート第一選択薬
断酒ジスルフィラム・シアナミド動機づけがある患者の第二選択薬
飲酒量低減ナルメフェン(セリンクロ)唯一の治療薬(学会の手引き 表4)
📋 忘れずに

薬物治療は補助的な役割。治療の主体は心理社会的治療(学会の手引き)

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⑤ 処方要件添付文書 5.2

薬だけでは、
要件を満たさない

1最初の一手ではない

「セリンクロを出すかどうか」から入らない

2併用が条件

心理社会的治療とセットで使う(服薬遵守・飲酒量低減が目的)

「心理社会的治療と併用しない場合の有効性は確立していない」(添付文書)
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⑥ 急にやめさせないJesse 2017

離脱症状には、
時間の流れがある


最終飲酒6時間24時間48時間72時間
🍺
🧠
🚨
開始:

ここから
時間を数える

出現域:

離脱けいれんが
出はじめる

継続:

けいれんの
危険が続く

大半:

けいれんの
90%以上は
ここまで

DT域:

振戦せん妄が
発症しうる

Jesse S, et al. Acta Neurol Scand. 2017;135(1):4-16.

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⑥ 見分けるGoodson 2014 / J3 表5

自己流の断酒を
止めるべき人


過去に離脱けいれん・振戦せん妄がある
朝に手がふるえる、迎え酒がある
他の薬物依存症を合併している
1つでも当てはまれば、自己判断でやめさせず専門医療機関へ(学会の手引き 表5)

Goodson CM, et al. Alcohol Clin Exp Res. 2014;38(10):2664-77.

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⑦ 減らすと変わるものRoerecke 2017 ほか

減らすと、
何が変わるか


項目減らすと変わること
血圧1日6杯以上飲む人が約50%減らすと、収縮期-5.5mmHg・拡張期-4.0mmHg(Roerecke 2017)
肝機能・体重1か月の断酒でHOMA・血圧・体重が改善(観察研究・Mehta 2018)
心房細動大きく減らす・やめると再発が減った(断酒の試験・Voskoboinik 2020)
睡眠時無呼吸飲酒量が多いほどリスクが高い(Simou 2018)
📋 ただし

「元通りになる」わけではないが、血圧・体重・睡眠は動く

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⑩ 紹介ライン学会の手引き 6.

専門医療機関へ
つなぐタイミング


🚨
入院を考慮

緊急の離脱症状(幻覚・けいれん・振戦せん妄)がある

🏥
専門医療機関に相談

断酒治療・離脱症状に対応できない/断酒と減酒の選択に迷う/重篤な合併症

🩺
外来で継続してよい

軽症で明確な合併症がなく、患者が減酒を希望している

相談先:依存症対策全国センター(全国の相談窓口・医療機関を探す)

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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰り


01
「やめられますか」で始めない。まず量を数える。
02
減酒でいい。「40g/20gに届いたか」で効果を判定しない。
03
「今日から一滴もやめます」を、そのまま帰さない。
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