誤嚥性肺炎を防ぐために、外来で先にやること
診察室で、患者や家族からそう言われる場面は多い。
反射的に浮かぶのは、とろみを足すという指導かもしれない。
それは、本当に最初にすべきことでしょうか。
同じ無作為化試験(Protocol 201)の、嚥下造影による即時評価と、3か月間追跡した肺炎発生率。
誤嚥の消失がいちばん多かったのは濃いとろみ。次いで中間のとろみ、顎引き姿勢の順だった。
顎引き姿勢ととろみ、中間のとろみと濃いとろみ。どちらも統計学的な差はなかった。
50歳以上・認知症またはパーキンソン病・嚥下造影で薄い液体の誤嚥が確認済(n=515)
ハザード比 0.84(95%CI 0.49–1.45, P=0.53)=差なし
値は3か月累積肺炎発生率。
50歳以上・認知症またはパーキンソン病・嚥下造影で薄い液体の誤嚥が確認済(n=515)
ハザード比 0.50(95%CI 0.23–1.09, P=0.083)=統計学的に有意な差ではない
とろみ群では、脱水(6% vs 2%)・尿路感染(6% vs 3%)・発熱(4% vs 2%)も多かった(検定結果は報告されていない)。
肺炎の予防に口腔ケアを弱く推奨する
日本呼吸器学会『成人肺炎診療ガイドライン2024』CQ20(エビデンスの確実性 C・投票 単独72%)
| アウトカム | リスク比(95%CI) | エビデンスの確実性 |
|---|---|---|
| 初回肺炎発症 | RR 0.57(0.40–0.80) | D(とても弱い) |
| 肺炎による死亡 | RR 0.53(0.30–0.95) | D(とても弱い) |
| 全死亡 | 有意差なし(RR 0.96, 95%CI 0.63–1.45) | ― |
対象は非挿管患者(RCT1編+観察研究6編の混合)。CQ全体の確実性はC。個別アウトカムの確実性はDである。
マンパワー不足や、認知症・精神疾患を有する症例では、すべての患者に実施できるとは限らない。
CQ全体の確実性はC(弱い)。個別アウトカムの確実性はD(とても弱い)。
この2つが、同時に「弱く推奨」の理由である。
口腔ケアは「する・しない」で比べられている
実際は「専門職の手が入るか、本人がふつうに磨くか」の比較。
Cochraneは「口腔ケアなしと比べた試験は1件もない」としている。
0.12%クロルヘキシジン洗口を含む多要素介入の試験は、無効中止となった。日本では粘膜面への高濃度クロルヘキシジンは使用できない(禁忌)。
顎引き姿勢は、患者がいちばん受け入れやすい調整だった。
しかし3か月後の肺炎は、とろみ群と差がなかった。
濃くするほど安全とは言えない。
だからといって、とろみをやめようという話ではない。
原則として,汁物を含む水分にはとろみ付けをすることを想定している
ただし,個別に水分の嚥下評価を行ってとろみ付けが不要と判断された場合には,その原則は解除できる
日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」Ⅰ-9
13日
治療期間の中央値
8日
治療期間の中央値
発症前に経口摂取していた誤嚥性肺炎患者の後ろ向きコホート(IPTW法で調整)。
胃瘻にすれば誤嚥性肺炎を防げるという証拠はない。
「むせるようになったんですね。
まず、とろみを足す前にやっておきたいことがあります。
食べたあとに歯をみがくことです。
歯や舌についた汚れが、寝ている間にのどへ落ちて肺炎の元になります。
毎食後にみがけるのがいちばんですが、難しければ1日2回を切らさないでください。
うがいだけでは汚れは落ちません。歯ブラシでこすり取ってください。
入れ歯の方は外して、歯ぐきと舌もやわらかいブラシでなでてください。」
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