外来患者指導シリーズ第30弾

両足のむくみの外来指導
弾性ストッキングの前に

「むくみには弾性ストッキング」と
言ってしまう前に

医知創造ラボ 監修:今村久司(脳神経内科・総合内科専門医)
今日のテーマTODAY'S POINT

「両足のむくみ」に
3つの外来手順

結論

危険を先に外す、お薬手帳を先に見る、圧迫の前に5つの確認——この3つです

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この動画でわかることAGENDA

本日のアジェンダ


1
危険なものを先に外す片足か両足か、心臓・肺の見落とし、すぐ受診すべきサイン
2
お薬手帳と原因の当たり薬剤性浮腫の頻度、利尿薬が効かない理由、原因の早見表
3
弾性ストッキングの前に足の脈とABI、5つの安全確認、共通の生活指導
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CHAPTER

第1章

危険なものを先に外す

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最初の分かれ道JCS 2017 / Weng 2017

まず、片足か両足か


最初の分かれ道は左右差です。片側は緊急側から考えます。

  • DVTの腫脹は片側下肢発現が81.6〜90.9%(2017年版GL)
  • 両側性は9.1〜18.4%=確率は下がるが否定はできない
  • 色調=蜂窩織炎など炎症性疾患は鮮紅色/DVTの静脈うっ滞は暗赤色
  • 静脈うっ滞は下肢挙上で色調が薄くなる。炎症性疾患は変化しにくい
  • 蜂窩織炎は入院259人中79人(30.5%)が誤診=「赤い=感染」と決めつけない
  • ただし片側の赤み・熱感・痛みは受診サインとして残す(安全側)
📋 外来トーク例

両足だから血栓ではありません、とは言えません

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見落としの古典Blankfield 1998 / 心不全GL2025

「両足=静脈のせい」と
決めつけない


心臓や肺が見落とされていた古典的な報告があります。

  • 初診時の印象は静脈不全71%・うっ血性心不全18%(45人)
  • 検査では心疾患が原因33%/肺高血圧あり42%/静脈不全22%(相互排他ではない)
  • n=45・単施設・1998年=有病率として扱わない
  • 心不全の症状=息切れ・起坐呼吸・発作性夜間呼吸困難を聞く
  • 特異的な身体所見=体重増加(>2 kg/週)(GL2025 表12)
  • 靴紐を結ぶときに苦しくならないか」(前屈呼吸苦)も聞く
📋 外来トーク例

体重は週1回、同じ条件で。1週間で2kgを超えて増えたら連絡してください

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CHAPTER

第2章

お薬手帳と原因の当たり

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本弾の核心Therapeutics Letter 162 (June 2026)

お薬手帳を先に見る——
薬が原因なら利尿薬は効かない


新しく出たむくみでは、検査より先にお薬手帳を開きます。

  • アムロジピン/ニフェジピンの高齢者の最大10%が開始1年以内に末梢浮腫
  • ガバペンチン/プレガバリンは最大5%
  • NSAIDsはナトリウム貯留により浮腫の頻度を倍にする(市販薬も確認)
  • 血管拡張によるむくみは利尿薬に反応しない=処方カスケードの入口
  • 安全なら原因薬を止める・減らす・変えるを、新しい治療より先に
  • 弾性ストッキングと挙上は補助であって原因対処の代わりではない
📋 対処の第一

最近の処方変更と、NSAIDsなど市販薬を含めた服薬レビューから始める

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薬剤別Vukadinović 2019 / Largeau 2022

むくみを起こす薬の
押さえどころ


薬剤押さえどころ
アムロジピン浮腫16.6% vs プラセボ6.2%(RR 2.9)。用量依存=中止の前に減量の選択肢
ガバペンチノイド開始・増量から数週間で出て、中止後は中央値7日で改善(症例集積)
ピオグリタゾンむくみが出ることがある(頻度を示す一次資料はない)
NSAIDs心不全GLも増悪因子の薬剤に挙げる。市販薬を含めて確認
📋 決めつけない

アムロジピンの浮腫の最大3分の1は薬のせいではない可能性——他の原因の検索を止めない

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原因の当たりEly 2006 / Trayes 2013

原因の当たりをつける
早見表


当たり手がかり
静脈不全高齢者の慢性両側性で最も多い。下垂性浮腫・ヘモジデリン沈着
リンパ浮腫非圧痕性でゴワつく皮膚
心・腎・肝息切れ・体重増加(心)、尿の泡立ち・顔のむくみ(腎)、腹水・黄疸(肝)
特発性浮腫初経〜閉経の女性で最も多い
睡眠時無呼吸肺高血圧がなくても両下肢浮腫を起こしうる。いびき・日中の眠気を聞く
📋 評価のタイミング(Ely 2006)

急性(72時間未満)や呼吸困難はその場で評価。無症状の慢性両側性の精査は次回でよい

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CHAPTER

第3章

弾性ストッキングの前に

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本弾の核心Rabe 2020 Rec 12 / JCS 2022・2017

勧める前に、足の脈を触る


圧迫の前に、動脈の確認が求められています。

  • Rec 12=足の脈・足関節の脈が弱い/触れなければABPIを先に測る
  • 手技=足の脈(足背動脈・後脛骨動脈)を両足で触る
  • 2017年版GL=下肢脈拍・冷感の確認など動脈血行の評価を着用前に
  • ABI 0.90以下=主幹動脈の狭窄・閉塞を疑う(JCS 2022)
  • ABI<0.9は禁忌でなく「慎重に経過を見る」(Rec 14)
  • 控えるラインは両論併記=日本GL:ABI<0.5・足関節圧<60 mmHg(DVT急性期の節)/国際:ABPI<0.6
📋 外来トーク例

ストッキングの前に、両足の脈を触らせてください

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限界も正直にHerráiz-Adillo 2018 / Armstrong 2010

触診は「ふるい」——
除外の決め手ではない


脈が触れたから動脈は大丈夫、とは言い切れません。

  • 看護師触診・どちらかの脈の消失を陽性→感度86.8%・特異度82.7%
  • 医師触診+大腿雑音聴診・ABI≦0.90のみ陽性→感度58.2%
  • 測り方が全部違う=「同じ検査のばらつき」として並べない
  • 言えるのは「低い報告では6割程度しか拾えない」まで。誤診30%超の報告も
  • 高齢・糖尿病・石灰化(ABI≧1.4)で触知の偽陰性が増える
  • 急がず両足を丁寧に触れば再現性と精度は許容範囲になる
📋 位置づけ

触診は「触れない・弱い人を拾ってABIに送る」ふるい。除外の決め手にはしない

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安全の要Rabe 2020 Rec 17・21 / JCS 2025・2017

確認は動脈だけではない——
5つの安全確認


確認要点
① 動脈足の脈を触る→触れない・弱いならABIを先に
② 心臓重症心不全=NYHA IVには推奨しない/NYHA IIIはルーチン使用を推奨しない(強度が違う)
③ 糖尿病知覚脱失を伴う重度ニューロパチー・皮膚壊死リスクの細小血管症は禁忌
④ 急性炎症赤く腫れて熱いあいだは自己判断で始めない。まず感染の評価
⑤ アレルギー圧迫材への確認されたアレルギーは禁忌。「以前かぶれたか」を聞く
📋 ④には両論がある

Rec 19は抗菌薬併用下の圧迫をsuggest=「禁止」と断定しない。並行して圧迫する判断は医療者が行う

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共通の生活指導Ely 2006 / Junge 2022 / Araujo 2016

効果が未証明のものは
未証明と言う


共通の生活指導は6項目です。

  • 下肢挙上=静脈不全の治療の基本。足を台に上げる時間を作る
  • 長時間の同じ姿勢を中断=健常者でも立位15分で下腿容積が平均63 mL増加
  • 足首の運動=効果は未証明(very low)。「やって害はない」水準
  • 塩分=数値目標は示さず個別化。「適切な塩分摂取量のエビデンスは確立していない」(GL2025)
  • 体重の自己記録=週1回・同じ条件。1週間で2kg超の増加は連絡ライン
  • スキンケア=潰瘍予防に重要。うっ滞性皮膚炎は保湿とステロイド外用
📋 言わないこと

ふくらはぎを動かせばむくみは取れる」とは断定しない

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生活指導の枠を超えるサインWHEN TO REFER

こんなときは、
専門的な評価を先に


大前提:両側性でもDVTは9.1〜18.4%否定はできない(2017年版GL)

1片足だけ急に腫れて痛む

暗赤色ならDVTを疑い当日〜翌日に評価

2片足の鮮紅色の赤み・熱感

蜂窩織炎を疑い受診。圧迫は始めない

3息切れ・急な体重増加

心不全を疑う。圧迫を始めず先に評価

4足の脈が触れない・冷たい

ストッキングを渡す前にABIを測定

📋 迷ったら、弾性ストッキングより先に評価を
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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰りポイント


01
危険を
先に外す

両足でもDVTは否定できない。心臓・肺の見落としに注意する

02
お薬手帳を
先に見る

薬が原因なら利尿薬は効かない。止める・減らす・変えるを先に考える

03
圧迫の前に
5つの確認

動脈・心臓・糖尿病・急性炎症・アレルギーを見てから勧める

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