BFCRS・ロラゼパムテスト・ECT・悪性カタトニアを脳神経内科医が解説
呼びかけても反応が乏しい。同じ姿勢のまま固まっている
指示と反対の行動。蝋細工のような抵抗を伴う姿勢保持
「意識障害」「重度のうつ」「せん妄」「拒薬」と片づけていないか
カタトニアは、鑑別に挙げて能動的に拾いにいかない限り、容易に見過ごされます。
昏迷・無動・無言・姿勢保持・カタレプシー・拒絶症などを特徴とする精神運動性の症候群です。
19世紀にKahlbaumが統合失調症の一亜型として記載。DSM-5で統合失調症から切り離され、独立した症候群として記載されました。
「カタトニア=統合失調症」は誤り。気分障害・身体疾患・自己免疫性脳炎など多様な背景に生じる独立症候群として捉えます。
「反応が乏しい患者を見たら、まずカタトニアを思い浮かべる」――これが予後を変える最初のステップです。
診断は背景疾患(精神疾患か医学的状態か)の特定とセットで行います。
総得点の評価者間信頼性は、尺度でr=0.93・スクリーニングで0.95と非常に高い再現性。
スクリーニング14項目で2項目以上が陽性なら、本評価の23項目へ進みます。
カタレプシー/蝋屈症四肢を他動的に動かすと、蝋細工のような抵抗を伴い不自然な姿勢のまま保持される
反響現象検者の動作や言葉を無意識に模倣(動作=反響動作、言葉=反響言語)
拒絶症指示と反対の行動をとる、あるいは一切反応しない
標準化評価で、治療プロトコルの適用と治療反応の定量的モニタリングが可能になります。
ロラゼパムテストで21例中16例で徴候が消失
初回の非経口チャレンジへの反応が最終反応を予測(Bush 1996 II)
効果発現が速く、悪性カタトニアを疑う場面での静注は診断的価値が高い
ベンゾジアゼピン(ロラゼパム)を第一選択とし、反応をみながら漸増。系統的レビューでもベンゾとECTが二本柱。
「効かないから増やし続ける」のではなく、背景疾患の見直しとECTへの移行を検討。ゾルピデムなどGABA作動薬の報告も。
用量・投与経路は個別化し、最新ガイドラインと添付文書を確認してください。
ECTは、ベンゾジアゼピン無効例および悪性カタトニアにおける第一選択。原著でもロラゼパム無効4例がECTに速やかに反応。
ベンゾジアゼピン反応不良
悪性カタトニア(生命的緊急)
全身合併症リスクが高い場合
重症・難治例では、早期のECT導入をためらわないことが合併症と死亡を減らす鍵です。
カタトニアに発熱・自律神経不安定・意識変容・CK上昇を伴う、生命を脅かす病態です。
ベンゾジアゼピン高用量・ECT、そして被疑薬中止と全身管理です。
| 項目 | 悪性カタトニア | NMS(悪性症候群) | セロトニン症候群 |
|---|---|---|---|
| 先行因子 | 精神/身体疾患・カタトニアの増悪 | 抗精神病薬(ドパミン遮断) | SSRI等セロトニン作動薬 |
| 発症 | 数日かけて進行 | 数日〜 | 数時間以内と急速 |
| 特徴的所見 | カタトニア徴候が前景 | 鉛管様筋強剛・高熱・CK著増 | ミオクローヌス・反射亢進・下痢 |
いずれも被疑薬中止と全身管理が基本。悪性カタトニアではベンゾとECTを軸に対応します。
特に悪性カタトニアでは、抗精神病薬が病態を誘発・悪化させ、NMSを引き起こすリスクがあります。
興奮があるからと反射的にドパミン遮断薬を投与するのは危険。第一に考えるべきは、あくまでベンゾジアゼピンとECTです。
気分障害(特に双極性障害)実際には気分障害が背景となる頻度も高い
統合失調症従来強調されてきたが、背景の一つにすぎない
うつ病重度の抑うつに伴って生じうる
「統合失調症だから」と決めつけて背景探索を怠らない姿勢が大切です。
抗NMDA受容体脳炎は精神症状(カタトニアを含む)で発症することがある。若年女性・卵巣奇形腫との関連が知られる。
精神科初診となって見逃されやすい。小児・思春期例では、カタトニアを呈する症例にECTが奏効した報告も。
「精神症状だけ」に見えても、身体疾患を疑う視点を忘れないでください。
小児のカタトニア診断は2018〜2023の間に約10倍に増加(Smith 2025)。見逃しを減らす意義が増しています。
反応の乏しい患者ではBFCRSでスクリーニング。精神科入院の約7〜9%、身体疾患下では約20%に潜む。
ロラゼパムテストで反応を確認。原著では76%が奏効。無効・悪性ならためらわずECTへ。
抗精神病薬は悪性カタトニアやNMSを誘発・悪化させうる。発熱・自律神経不安定・CK上昇は危険サイン。背景に抗NMDA受容体脳炎など身体疾患も疑う。
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反応の乏しい患者を前にしたら「カタトニアかもしれない」を思い出す
より詳しい解説と参考文献は概要欄のブログ記事へ。また次回の動画でお会いしましょう