医知創造ラボ

カタトニア(緊張病)
診断と治療

BFCRS・ロラゼパムテスト・ECT・悪性カタトニアを脳神経内科医が解説

精神科・脳神経内科・救急・研修医の方へ 監修:脳神経内科医
こんな場面、ありませんかINTRO

🛏️

呼びかけても反応が乏しい。同じ姿勢のまま固まっている

🔁

指示と反対の行動。蝋細工のような抵抗を伴う姿勢保持

💊

「意識障害」「重度のうつ」「せん妄」「拒薬」と片づけていないか

カタトニアは、鑑別に挙げて能動的に拾いにいかない限り、容易に見過ごされます。

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基礎知識CONCEPT

カタトニアは独立した精神運動性の症候群


昏迷・無動・無言・姿勢保持・カタレプシー・拒絶症などを特徴とする精神運動性の症候群です。

📋 概念の変遷

19世紀にKahlbaumが統合失調症の一亜型として記載。DSM-5で統合失調症から切り離され、独立した症候群として記載されました。

⚠️ 古い等式に注意

「カタトニア=統合失調症」は誤り。気分障害・身体疾患・自己免疫性脳炎など多様な背景に生じる独立症候群として捉えます。

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疫学EPIDEMIOLOGY

頻度は決して稀ではない


7-9%
精神科入院での有病率
(統合9.0%/低異質性7.8%/原著7%)
Solmi 2018/Bush 1996
20.6%
身体・神経疾患下
(精神科併存なし)
Solmi 2018
10.6
発生率
エピソード/10万人年
Rogers 2021
せん妄と診断された患者の26%がカタトニアを併存(Appiani 2023)。内科・救急・脳神経内科でこそ意識すべき数字です。
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見逃しの構造WHY MISSED

なぜこれほど見逃されるのか


「意識障害」
無言・無動を意識レベルの低下と解釈してしまう
「重度のうつ」
活動性の低下をうつの悪化と捉えてしまう
「拒薬・非協力」
食事・服薬の拒否を協力が得られないと片づける
✓ 予後を変える一手間

「反応が乏しい患者を見たら、まずカタトニアを思い浮かべる」――これが予後を変える最初のステップです。

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診断基準DSM-5

DSM-5 ―12徴候のうち3つ以上


運動の減少DECREASED
昏迷・カタレプシー・蝋屈症・無言症
意思に反する/特異な運動ABNORMAL
姿勢保持・わざとらしさ・常同症・しかめ顔
意思に反する応答RESPONSE
拒絶症・反響言語・反響動作
運動の増加INCREASED
興奮(外的刺激によらない)

診断は背景疾患(精神疾患か医学的状態か)の特定とセットで行います。

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評価尺度BFCRS

標準ツール BFCRS
Bush-Francis評価尺度


23
項目の評価尺度
14
項目のスクリーニング版
📊 高い再現性

総得点の評価者間信頼性は、尺度でr=0.93・スクリーニングで0.95と非常に高い再現性。

📋 実務的運用

スクリーニング14項目で2項目以上が陽性なら、本評価の23項目へ進みます。

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診察BEDSIDE

ベッドサイドでどう診るか


カタレプシー/蝋屈症四肢を他動的に動かすと、蝋細工のような抵抗を伴い不自然な姿勢のまま保持される

反響現象検者の動作や言葉を無意識に模倣(動作=反響動作、言葉=反響言語)

拒絶症指示と反対の行動をとる、あるいは一切反応しない

標準化評価で、治療プロトコルの適用と治療反応の定量的モニタリングが可能になります。

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TREATMENT ① LORAZEPAM TEST
76%

ロラゼパムテストで21例中16例で徴候が消失

初回の非経口チャレンジへの反応が最終反応を予測(Bush 1996 II)

効果発現が速く、悪性カタトニアを疑う場面での静注は診断的価値が高い

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治療①BENZODIAZEPINE

ベンゾジアゼピンの位置づけ


📋 BAP 2023ガイドライン

ベンゾジアゼピン(ロラゼパム)を第一選択とし、反応をみながら漸増。系統的レビューでもベンゾとECTが二本柱。

⚠️ 反応が乏しいとき

「効かないから増やし続ける」のではなく、背景疾患の見直しとECTへの移行を検討。ゾルピデムなどGABA作動薬の報告も。

用量・投与経路は個別化し、最新ガイドラインと添付文書を確認してください。

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治療②ECT

もう一方の柱 ―ECT(電気けいれん療法)


📋 位置づけ

ECTは、ベンゾジアゼピン無効例および悪性カタトニアにおける第一選択。原著でもロラゼパム無効4例がECTに速やかに反応。

ベンゾジアゼピン反応不良

悪性カタトニア(生命的緊急)

全身合併症リスクが高い場合

重症・難治例では、早期のECT導入をためらわないことが合併症と死亡を減らす鍵です。

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救急MALIGNANT CATATONIA

悪性カタトニア ―レッドフラッグ


カタトニアに発熱・自律神経不安定・意識変容・CK上昇を伴う、生命を脅かす病態です。

🌡️
発熱
💓
自律神経不安定
(血圧/脈拍変動・発汗)
🌀
意識変容
🧪
CK上昇
対応の軸

ベンゾジアゼピン高用量・ECT、そして被疑薬中止と全身管理です。

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鑑別DIFFERENTIAL

悪性カタトニア/NMS/セロトニン症候群


項目悪性カタトニアNMS(悪性症候群)セロトニン症候群
先行因子精神/身体疾患・カタトニアの増悪抗精神病薬(ドパミン遮断)SSRI等セロトニン作動薬
発症数日かけて進行数日〜数時間以内と急速
特徴的所見カタトニア徴候が前景鉛管様筋強剛・高熱・CK著増ミオクローヌス・反射亢進・下痢

いずれも被疑薬中止と全身管理が基本。悪性カタトニアではベンゾとECTを軸に対応します。

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最重要メッセージCAUTION

抗精神病薬は
安易に使わない

注意

特に悪性カタトニアでは、抗精神病薬が病態を誘発・悪化させ、NMSを引き起こすリスクがあります。

興奮があるからと反射的にドパミン遮断薬を投与するのは危険。第一に考えるべきは、あくまでベンゾジアゼピンとECTです。

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背景疾患①PSYCHIATRIC

カタトニアは背景疾患を探す入口


気分障害(特に双極性障害)実際には気分障害が背景となる頻度も高い

統合失調症従来強調されてきたが、背景の一つにすぎない

うつ病重度の抑うつに伴って生じうる

「統合失調症だから」と決めつけて背景探索を怠らない姿勢が大切です。

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背景疾患②AUTOIMMUNE

身体・自己免疫 ―抗NMDA受容体脳炎


🛡️ 見逃さない

抗NMDA受容体脳炎は精神症状(カタトニアを含む)で発症することがある。若年女性・卵巣奇形腫との関連が知られる。

⚠️ 繰り返し指摘される落とし穴

精神科初診となって見逃されやすい。小児・思春期例では、カタトニアを呈する症例にECTが奏効した報告も。

「精神症状だけ」に見えても、身体疾患を疑う視点を忘れないでください。

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背景検索の実際WORK-UP

補助所見と検査の組み立て


🩸
血液一般・電解質
🧪
CK・甲状腺機能
🛡️
自己抗体
(抗NMDA受容体抗体)
💧
髄液検査
🧲
頭部MRI
📈
脳波(EEG)

小児のカタトニア診断は2018〜2023の間に約10倍に増加(Smith 2025)。見逃しを減らす意義が増しています。

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まとめALGORITHM

診療アルゴリズム ―5つのステップ


1
疑う
無言・無動・姿勢保持・拒薬を「意識障害/うつ/非協力」で片づけず、カタトニアを鑑別に挙げる
2
拾う
BFCRSスクリーニング(14項目)、陽性なら23項目で評価
3
確かめる/治す
ロラゼパムテストで反応を確認し、治療を兼ねる
4
移行する
無効・悪性ならECTへ。抗精神病薬は慎重に
5
探す
背景疾患を検索(精神疾患/抗NMDA受容体脳炎などの身体疾患)
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テイクホームメッセージ3 KEY POINTS

今日持ち帰る3つの核心


1
拾う

反応の乏しい患者ではBFCRSでスクリーニング。精神科入院の約7〜9%、身体疾患下では約20%に潜む。

2
確かめて治す

ロラゼパムテストで反応を確認。原著では76%が奏効。無効・悪性ならためらわずECTへ。

3
悪化させない・見逃さない

抗精神病薬は悪性カタトニアやNMSを誘発・悪化させうる。発熱・自律神経不安定・CK上昇は危険サイン。背景に抗NMDA受容体脳炎など身体疾患も疑う。

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出典REFERENCES

主要な一次資料


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✚ 医知創造ラボ

カタトニアは「見逃されやすいが治療可能」な症候群

反応の乏しい患者を前にしたら「カタトニアかもしれない」を思い出す

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