医知創造ラボ

動脈硬化と認知症

「アルツハイマー型」と「血管性」は
分けられない——剖検データが示すこと

#08 監修:脳神経内科専門医
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よくある思い込みA COMMON ASSUMPTION

「アルツハイマー型だから、血圧は関係ない

今日、確かめること

認知症の脳を実際に見ると、この前提は成り立ちません。

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医知創造ラボWHAT YOU'LL LEARN

この動画で分かること、3つ


01
アルツハイマー型と血管、
混在する人が多い

認知症の脳の多くは、
「アルツハイマー」と
「血管」が混ざっている。

02
血管の病変は
別ルートでも効いてくる

動脈硬化・細動脈硬化は、
アルツハイマー病理とは
別に認知機能と関連する。

03
「防げる」とは
証明されていない

血管を守れば認知症を
防げるとは言えない。
それでも打つ手はある。

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はじめにNOT EITHER-OR

認知症を、「2択」で考えていませんか


🧠 よくある捉え方

「アルツハイマー型」か「血管性」か、どちらか一方という理解。

🔬 実際の脳は

多くの場合、両方の変化が同時に見られます

この後、それを剖検データで確認していきます。

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Rush Memory and Aging ProjectSchneider 2007

生前から見続けた141人の剖検


👤 対象

地域に暮らす高齢者141人。生前は年1回、臨床評価を受けていた。

🔍 死後に調べたこと

脳を調べ、アルツハイマー病理・脳梗塞・
パーキンソン病/レビー小体病
を診断した。

急性・慢性の脳異常がなかったのは20人(14.2%)でした。

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認知症のあった50人の内訳Schneider 2007

最多は純粋なADでなく「AD+梗塞」


病理の組み合わせ割合(人数)
AD+梗塞38.0%(n=19)
純粋AD30.0%(n=15)
血管性認知症12%(n=6)
AD+PD/LBD12%(n=6)

認知症のあった50人のうち、いちばん多かった組み合わせです。

141例の剖検コホートの実数です。一般人口の割合ではありません。

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単一病理との比較Schneider 2007

複数の病理を持つと、オッズ約2.8倍


📊 年齢調整後のオッズ比

複数の病理を持つ人は、単一病理の人に比べOR 2.8

⚠ 信頼区間の幅が広い

95%CI 1.2〜6.7有意だが、値の精度は高くありません。

認知症のあった50人のうち、50%超が複数の病理を持っていました。

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1,143人・横断研究Arvanitakis 2016

動脈硬化そのものが、AD型認知症と関連


血管の変化オッズ比
動脈硬化
(大きな血管)
OR 1.33(1.11–1.58)
細動脈硬化
(細い血管)
OR 1.20(1.04–1.40)

アルツハイマー病理と梗塞を調整してもなお関連していました。

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因果関係ではありませんCROSS-SECTIONAL STUDY

ただし、これは「横断研究」です


⏳ 順番までは分かっていない

「動脈硬化があるから認知症になった」という時間の前後関係は示されていません

🖊 著者自身の言葉でも

血管病理は認知症の「気づかれていない危険因子かもしれない」と書かれている。

死亡時年齢の中央値は88.8歳。きわめて高齢な人の集団という点にも注意が必要です。

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認知症なし91人の内訳Schneider 2007

病理があっても、発症していない人がいる


認知症のなかった91人割合(人数)
慢性病理の異常なし28.6%(n=26)
純粋AD病理24.2%(n=22)
梗塞17.6%(n=16)

純粋なAD病理を持ちながら認知症でなかった人が、
4人に1人近く
いました。

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混合病理レビューKapasi 2017

併存する病理は、発症の「閾値」を下げる


📚 レビュー論文の位置づけ

個々の研究を束ねた総説。ここから数値は出てきません

🧩 考えられていること

脳血管病理・レビー小体などの併存が、認知症が臨床的に表面化する閾値を下げる

数値の裏づけが要るときは、前のスライドの数字に戻ります。

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46研究のメタ解析Debette & Markus 2010

白質病変は、認知症1.9倍と関連


アウトカムハザード比
脳卒中HR 3.3(2.6–4.4)
認知症HR 1.9(1.3–2.8)
死亡HR 2.0(1.6–2.7)

著者の結論は「危険因子の詳細なスクリーニングを促すべき」治療が必要という意味ではありません。

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15,744人・25年追跡Gottesman 2017 ARIC

中年期の糖尿病は、APOEとほぼ同じ重さ


中年期の因子ハザード比
糖尿病HR 1.77(1.53–2.04)
(参考)
APOE ε4遺伝子型
HR 1.98(1.78–2.21)

著者は「糖尿病のハザード比は
APOE ε4とほぼ同じくらい高かった」と述べています。

米国のコホート(黒人27.1%)。日本人への外挿は慎重に。

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久山町・4時点調査Sekita 2010

日本では、有病率がこう動いた


有病率1985199219982005
アルツハイマー型1.1%1.3%2.3%3.8%
血管性認知症2.3%1.5%1.5%2.5%

65歳以上住民の有病率(年齢・性別で調整)。発症率ではありません。

P for trend は AD<0.001、血管性は0.82。

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比が動いた理由Sekita 2010

血管性認知症は、「減ったとは言えない」


📉 血管性認知症の有病率

2.3%→2.5%(P for trend = 0.82)。有意な傾向は検出されていません

🔁 比が逆転したのは

アルツハイマー型が増えたから(1.1%→3.8%)。血管性が減ったからではありません。

「血管性認知症は過去のもの」という語りは、このデータでは支持されません

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介入の証拠WHAT CAN WE DO

防げるとは言えない。それでも


⚠ 証明されていないこと

血管を守れば認知症を確実に防げると証明されたわけではありません

💡 それでも手を打つ理由

これらの危険因子を持つ人で、認知症のリスクが高いことが複数の観察研究で示されています

「因子に介入すれば認知症が減る」かどうかは、まだ証明されていません

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まとめSUMMARY

持ち帰るのは、3つ


01
アルツハイマー型と血管、
混在する人が多い

認知症のある人の
最多はAD+梗塞。
2択では捉えられない。

02
血管の病変は
別ルートでも効いてくる

AD病理・梗塞を
調整してもなお関連。
ただし横断研究。

03
「防げる」とは
証明されていない

それでも血管の因子に
手を打つ理由はある。
個別数値は各弾で。

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