「下げれば防げる」と言えるのか、一次資料で確認する
「血圧を下げれば認知症を防げる」という結論で終わる。
数値を見ると、話はもう少し込み入っている。
14因子の合計PAFは45%。
うち高血圧の中年期PAFは2%(Livingston 2024, Lancet)。
PAFは集団の人口寄与割合であり、個人の確率ではない。
「治せばリスクが2%下がる」という意味ではない。
TIMING OF BLOOD PRESSURE
| 血圧パターン | 認知症発症率 (/100人年) | ハザード比 (95%CI) |
|---|---|---|
| 中年期・晩年期 とも高血圧 | 2.83 | HR 1.49 (1.06–2.08) |
| 中年期高血圧→ 晩年期低血圧 | 4.26 | HR 1.62 (1.11–2.37) |
晩年期の血圧にかかわらず、中年期の持続的高血圧が認知症と関連していた(HR 1.41、95%CI 1.17–1.71)。
中年期高血圧は、20年間の認知機能低下と関連していた(global zスコア −0.056)。
追跡終了時点(晩年期)の収縮期血圧は、先行20年の認知変化と関連していなかった。
降圧薬を使っていた人は、未治療の高血圧の人より20年の低下が小さかった。
| 晩年期の血圧レベル | 血管性認知症の発症率 (/1000人年) | リスク (正常血圧比) |
|---|---|---|
| 正常血圧 | 2.3 | 基準 |
| 前高血圧 | 8.4 | 3.0倍 |
| ステージ1高血圧 | 12.6 | 4.5倍 |
| ステージ2高血圧 | 18.9 | 5.6倍 |
アルツハイマー病では、同様の関連は見られなかった(P for trend = 0.88)。
DOES LOWERING HELP?
認知症・認知機能障害:OR 0.93(95%CI 0.88–0.98)。
絶対リスク減少:0.39%(95%CI 0.09–0.68%、平均4.1年)。
調整オッズ比 0.87(95%CI 0.75–0.99)。
このときの平均降圧幅は10/4mmHg。
相対値だけでは大きく見えるが、絶対値ではこの程度の差である。
SPRINT MIND
対象:50歳以上・高血圧あり(糖尿病・脳卒中既往は除く)。
米国・プエルトリコ102施設・9,361例。
厳格群4,678例/標準群4,683例、平均年齢67.9歳。
介入期間の中央値3.34年、総追跡の中央値5.11年。
| 評価項目 | 厳格群 vs 標準群 (/1000人年) | ハザード比(95%CI) |
|---|---|---|
| 認知症 (主要評価項目) | 7.2 vs 8.6 | HR 0.83(0.67–1.04) 有意差なし |
| MCI (副次) | 14.6 vs 18.3 | HR 0.81(0.69–0.95) 有意に減少 |
| MCI+認知症 (複合・副次) | 20.2 vs 24.1 | HR 0.85(0.74–0.97) 有意に減少 |
試験が早期中止となり、認知症の発症例が予想より少なかったため、このエンドポイントについては検出力不足であった
可能性がある
SPRINT MIND Investigators. JAMA. 2019;321(6):553-561.
正しい言い方は「示せなかった」。「効果がないと証明された」ではない。
中国農村部の高血圧33,995例、48か月介入。
主要評価項目は有意に減少
(RR 0.85、95%CI 0.76–0.95)。
対象も降圧幅も、通常の外来とは大きく異なる。
中年期高血圧→晩年期低血圧が、5パターン中もっともリスクが高かった(HR 1.62、95%CI 1.11–2.37)。
「降圧薬で下げすぎると認知症になる」と読める
これは血圧パターンの分類。降圧薬を検証した試験ではない
自己判断で降圧薬を減らしたり、やめたりしないでください。
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