医知創造ラボ

高血圧と認知症

「下げれば防げる」と言えるのか、一次資料で確認する

#01 監修:脳神経内科専門医
今日の結論TODAY'S CONCLUSION

高血圧は危険因子。ただし
下げれば防げる」とはまだ言えない

結論
  • 効くのは、いま測っている血圧より中年期の血圧。
  • 増えるのは、まず血管性認知症。
  • 厳格に下げて有意に減ったのはMCI。認知症単独では有意差が出なかった。
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よくある説明THE COMMON CLAIM

本当に、そう言い切れるのか

多くの記事

「血圧を下げれば認知症を防げる」という結論で終わる。

一次資料

数値を見ると、話はもう少し込み入っている。

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前提THE YARDSTICK: PAF

高血圧は、認知症の14因子のひとつ


📋 Lancet 2024委員会報告

14因子の合計PAFは45%。

うち高血圧の中年期PAFは2%(Livingston 2024, Lancet)。

⚠️ PAFの読み方

PAFは集団の人口寄与割合であり、個人の確率ではない。

「治せばリスクが2%下がる」という意味ではない。

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CHAPTER 01

TIMING OF BLOOD PRESSURE

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いつの血圧
効くのか

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中年期→晩年期の血圧パターンWalker 2019, JAMA(ARIC)

効くのは、中年期の持続的な高血圧


血圧パターン認知症発症率
(/100人年)
ハザード比
(95%CI)
中年期・晩年期
とも高血圧
2.83HR 1.49
(1.06–2.08)
中年期高血圧→
晩年期低血圧
4.26HR 1.62
(1.11–2.37)

晩年期の血圧にかかわらず、中年期の持続的高血圧が認知症と関連していた(HR 1.41、95%CI 1.17–1.71)。

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いま測っている血圧は?Gottesman 2014, JAMA Neurol(ARIC)

晩年期の血圧は、先行20年の変化と関連しなかった


📋 20年間の追跡でわかったこと

中年期高血圧は、20年間の認知機能低下と関連していた(global zスコア −0.056)。

追跡終了時点(晩年期)の収縮期血圧は、先行20年の認知変化と関連していなかった。

降圧薬を使っていた人は、未治療の高血圧の人より20年の低下が小さかった。

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増えるのはどの認知症かNinomiya 2011, Hypertension(久山町)

高血圧で強く増えるのは、まず血管性認知症


晩年期の血圧レベル血管性認知症の発症率
(/1000人年)
リスク
(正常血圧比)
正常血圧2.3基準
前高血圧8.43.0倍
ステージ1高血圧12.64.5倍
ステージ2高血圧18.95.6倍

アルツハイマー病では、同様の関連は見られなかった(P for trend = 0.88)。

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CHAPTER 02

DOES LOWERING HELP?

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下げると減るのか

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相対値と絶対値TRIAL META-ANALYSES

減るが、劇的ではない


📊 Hughes 2020(JAMA・12試験 92,135例)

認知症・認知機能障害:OR 0.93(95%CI 0.88–0.98)。

絶対リスク減少:0.39%(95%CI 0.09–0.68%、平均4.1年)。

📊 Peters 2022(Eur Heart J・プラセボ対照5試験 28,008例)

調整オッズ比 0.87(95%CI 0.75–0.99)。

このときの平均降圧幅は10/4mmHg。

相対値だけでは大きく見えるが、絶対値ではこの程度の差である。

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CHAPTER 03 — THE PIVOTAL TRIAL

SPRINT MIND

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何が減って
何が減らなかった

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試験のかたちSPRINT MIND 2019, JAMA

収縮期120未満 vs 140未満


📋 試験の概要

対象:50歳以上・高血圧あり(糖尿病・脳卒中既往は除く)。

米国・プエルトリコ102施設・9,361例。

厳格群4,678例/標準群4,683例、平均年齢67.9歳。

介入期間の中央値3.34年、総追跡の中央値5.11年。

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結果RESULTS

減ったのはMCI。認知症単独では有意差なし


評価項目厳格群 vs 標準群
(/1000人年)
ハザード比(95%CI)
認知症
(主要評価項目)
7.2 vs 8.6HR 0.83(0.67–1.04)
有意差なし
MCI
(副次)
14.6 vs 18.3HR 0.81(0.69–0.95)
有意に減少
MCI+認知症
(複合・副次)
20.2 vs 24.1HR 0.85(0.74–0.97)
有意に減少
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では「効かなかった」のかWHY NOT SIGNIFICANT
"

試験が早期中止となり、認知症の発症例が予想より少なかったため、このエンドポイントについては検出力不足であった
可能性がある

SPRINT MIND Investigators. JAMA. 2019;321(6):553-561.

正しい言い方は「示せなかった」。「効果がないと証明された」ではない。

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認知症そのものが減った試験もHe 2025, Nat Med

条件が違えば、結果も違う


📋 He 2025(Nat Med)

中国農村部の高血圧33,995例、48か月介入。

主要評価項目は有意に減少
(RR 0.85、95%CI 0.76–0.95)。

⚠️ 日本の外来と条件が違う

対象も降圧幅も、通常の外来とは大きく異なる。

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「降圧剤で認知症になる」への回答Walker 2019, JAMA

パターンはあるが、降圧薬の試験ではない


📊 観察されたパターン

中年期高血圧→晩年期低血圧が、5パターン中もっともリスクが高かった(HR 1.62、95%CI 1.11–2.37)。

「降圧薬で下げすぎると認知症になる」と読める

これは血圧パターンの分類。降圧薬を検証した試験ではない

自己判断で降圧薬を減らしたり、やめたりしないでください。

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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰り


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