「下げれば防げる」「薬で認知症になる」を一次資料で確認する
「LDLが高い」と言われた。下げれば認知症を防げるのか。
物忘れが気になる。薬のせいではないか、やめたほうがよいのか。
一次資料の数値で、両方の疑問に答える。
14因子の合計PAFは45%。
うち高LDLコレステロールの中年期PAFは7%(難聴と並んで最大タイ)。2024年版で新規に加わった2因子のひとつ。
PAFは集団の人口寄与割合であり、個人の確率ではない。
「下げればあなたのリスクが7%下がる」という意味ではない。
TIMING OF LDL
| LDLを 測った年齢 | 測定から 10年以内の診断 | 測定から 10年より後の診断 |
|---|---|---|
| 65歳未満 (n=636,262) | RR 1.10 (1.04–1.15) | RR 1.17 (1.08–1.27) |
| 65歳以上 (n=317,373) | RR 1.03 (1.01–1.05) | RR 1.07 (1.03–1.13) |
原著の結論文は「中年期に測ったLDLは、10年より後の認知症リスクと控えめに(modestly)関連する」。
総コレステロール高値 →
晩年期のアルツハイマー病
相対リスク
2.14(1.33–3.44)
総コレステロール高値は、
MCI・AD・血管性・全認知症・
認知機能低下のいずれとも関連なし
⚠️ ここで扱うのは総コレステロール(TC)であってLDLではない。「中年期のLDLは2.14倍」とは書き換えられない。
| 40〜45歳時の 総コレステロール | ADのHR(95%CI) | 血管性認知症のHR(95%CI) |
|---|---|---|
| 境界域 200-239 mg/dL | 1.23(0.97–1.55) 有意でない | 1.50(1.01–2.23) |
| 高値 240 mg/dL以上 | 1.57(1.23–2.01) | 1.26(0.82–1.96) 有意でない |
血管性認知症は境界域のみ有意。「高いほど増える」とはきれいに揃わない。
LOW LDL IN LATE LIFE?
発症56人・非発症971人で、26年間のコレステロール変化の傾きを比較。
発症した男性、特にAD男性では診断の15年以上前から低下が始まり、その後も低いままだった。
原文は"may be associated with"。対象は日系米国人男性のみ。「だから高いままでよい」にもならない。
老人斑がある人で、LDL・総コレステロールなどの脂質指標が有意に高かった。神経原線維変化とは無関係だった。
LDL高値でアミロイド集積が大きく(APOE ε4とは独立)、HDL低値で白質高信号が大きい。
剖検病理・横断研究で発症率や因果ではない。「高血圧は血管性、LDLはアルツハイマー」と単純に二分しない。
DOES THE DRUG CAUSE DEMENTIA?
2012年、FDAは有害事象報告システム(自発報告)と医学文献のレビューに基づいて、スタチンの認知機能への潜在的な有害作用に関する警告を発出した
Ott BR, et al. J Gen Intern Med. 2015;30(3):348-58.
現行の添付文書では、Warningsではなく6.2 市販後の経験の欄に「まれな報告」として記載。中止により回復(症状消失まで中央値3週間)。
⚠️ ただし、やめるかどうかは自己判断で決めない。気になったら担当の先生に相談を。
| 研究 | 規模 | 結果 |
|---|---|---|
| RCT25件の メタ解析 | うち14試験 27,643人で解析 | SMD 0.01 (−0.01〜0.03) |
| Cochrane レビュー | 2試験 26,340人 | 5種の検査 すべて差なし |
| ASPREE 観察解析 | 65歳以上 18,846人 | probable AD HR 1.33(1.00–1.77・p=0.05) |
⚠️ ASPREEの数値は境界域。論文自身は「関連しなかった」と総括。切り出さず、無かったことにもしない。
| アウトカム | LDL 1 mmol/L低いことに対応するリスク比(95%CI) |
|---|---|
| アルツハイマー病 | 0.57(0.27–1.17) |
| 血管性認知症 | 0.81(0.34–1.89) |
| 全認知症 | 0.66(0.34–1.26) |
| パーキンソン病 | 1.02(0.26–4.00) |
遺伝子を使った解析。いずれも95%CIが1をまたぎ有意ではない。「増やす方向の効果は見えなかった」までが言えること。
| 研究デザイン | スタチンによる脂質治療と認知症 |
|---|---|
| 前向き 観察研究 | 認知症リスク低下と関連 (17件、RR 0.77、95%CI 0.63–0.95) |
| 無作為化 比較試験 | 認知症発症を扱ったRCTは1件のみで、関連は示されなかった |
Cochraneの著者結論:「晩年期に投与されたスタチンが認知機能低下や認知症を予防しないことについては、良質なエビデンスがある」。
晩年期の値との関連は弱い。下がってきたら「先ぶれ」かもしれない。
RCTのメタ解析・Cochrane・遺伝子解析のいずれも支持していない。
日本のGLはLDL目標に
認知症を挙げていない。
PREVENTABLE試験が
進行中。
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