医知創造ラボ

コレステロールと認知症

「下げれば防げる」「薬で認知症になる」を一次資料で確認する

#02 監修:脳神経内科専門医
今日の結論TODAY'S CONCLUSION

LDLは危険因子。ただし
下げれば防げる」とはまだ言えない

結論
  • 効くのは中年期のLDL。
    晩年期の総コレステロール高値はどの認知症とも関連しなかった。
  • 高齢での低下は「先ぶれ」かもしれない。診断の15年以上前から始まっていた。
  • 「薬で認知症になる」も「防げる」も、一次資料では支持されていない。
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よくある2つの疑問TWO STARTING POINTS

何が知りたくて、この動画を見ているか

📋 健診で指摘された方へ

「LDLが高い」と言われた。下げれば認知症を防げるのか。

💊 薬を飲んでいる方へ

物忘れが気になる。薬のせいではないか、やめたほうがよいのか。

一次資料の数値で、両方の疑問に答える。

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前提THE YARDSTICK: PAF

高LDLは、認知症の14因子のひとつ


📋 Lancet 2024委員会報告

14因子の合計PAFは45%。

うち高LDLコレステロールの中年期PAFは7%(難聴と並んで最大タイ)。2024年版で新規に加わった2因子のひとつ。

⚠️ PAFの読み方

PAFは集団の人口寄与割合であり、個人の確率ではない。

「下げればあなたのリスクが7%下がる」という意味ではない。

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CHAPTER 01

TIMING OF LDL

01

いつのLDL
効くのか

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英国185万人・年齢帯×追跡期間Iwagami 2021, Lancet Healthy Longev

効くのは、65歳未満で測った値


LDLを
測った年齢
測定から
10年以内の診断
測定から
10年より後の診断
65歳未満
(n=636,262)
RR 1.10
(1.04–1.15)
RR 1.17
(1.08–1.27)
65歳以上
(n=317,373)
RR 1.03
(1.01–1.05)
RR 1.07
(1.03–1.13)

原著の結論文は「中年期に測ったLDLは、10年より後の認知症リスクと控えめに(modestly)関連する」。

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中年期と晩年期で結果が逆転Anstey 2017, J Alzheimers Dis

効くのは中年期。晩年期は関連なし


中年期

総コレステロール高値 →
晩年期のアルツハイマー病
相対リスク
2.14(1.33–3.44)

晩年期

総コレステロール高値は、
MCI・AD・血管性・全認知症・
認知機能低下のいずれとも関連なし

⚠️ ここで扱うのは総コレステロール(TC)であってLDLではない。「中年期のLDLは2.14倍」とは書き換えられない。

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40〜45歳の測定・30年後Solomon 2009, DGCD

若い時期の値が、30年後に効いてくる


40〜45歳時の
総コレステロール
ADのHR(95%CI)血管性認知症のHR(95%CI)
境界域
200-239 mg/dL
1.23(0.97–1.55)
有意でない
1.50(1.01–2.23)
高値
240 mg/dL以上
1.57(1.23–2.01)1.26(0.82–1.96)
有意でない

血管性認知症は境界域のみ有意。「高いほど増える」とはきれいに揃わない。

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CHAPTER 02

LOW LDL IN LATE LIFE?

02

高齢者は低いほう
危ないのか

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日系米国人男性1,027人・26年追跡Stewart 2007, Arch Neurol

下がっていたのは、診断の15年以上前から


📋 Honolulu-Asia Aging Study

発症56人・非発症971人で、26年間のコレステロール変化の傾きを比較。

発症した男性、特にAD男性では診断の15年以上前から低下が始まり、その後も低いままだった。

⚠️ 断定はしない

原文は"may be associated with"。対象は日系米国人男性のみ。「だから高いままでよい」にもならない。

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見えているのはアミロイド側Matsuzaki 2011 / Kang 2023

久山町の剖検と、韓国のアミロイドPET


📋 久山町・剖検147例

老人斑がある人で、LDL・総コレステロールなどの脂質指標が有意に高かった。神経原線維変化とは無関係だった。

📋 韓国・アミロイドPET 1,175人

LDL高値でアミロイド集積が大きく(APOE ε4とは独立)、HDL低値で白質高信号が大きい。

剖検病理・横断研究で発症率や因果ではない。「高血圧は血管性、LDLはアルツハイマー」と単純に二分しない。

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CHAPTER 03

DOES THE DRUG CAUSE DEMENTIA?

03

薬で認知症
なるのか

出どころは2012年のFDA警告THE ORIGIN OF THE CLAIM
"

2012年、FDAは有害事象報告システム(自発報告)と医学文献のレビューに基づいて、スタチンの認知機能への潜在的な有害作用に関する警告を発出した

Ott BR, et al. J Gen Intern Med. 2015;30(3):348-58.

現行の添付文書では、Warningsではなく6.2 市販後の経験の欄に「まれな報告」として記載。中止により回復(症状消失まで中央値3週間)。

⚠️ ただし、やめるかどうかは自己判断で決めない。気になったら担当の先生に相談を。

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無作為化試験のまとめOtt 2015 / Cochrane 2016 / Zhou 2021

有害な影響は、示されていない


研究規模結果
RCT25件の
メタ解析
うち14試験
27,643人で解析
SMD 0.01
(−0.01〜0.03)
Cochrane
レビュー
2試験
26,340人
5種の検査
すべて差なし
ASPREE
観察解析
65歳以上
18,846人
probable AD
HR 1.33(1.00–1.77・p=0.05)

⚠️ ASPREEの数値は境界域。論文自身は「関連しなかった」と総括。切り出さず、無かったことにもしない。

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デンマーク111,194人Benn 2017, BMJ

生涯LDLが低くても、増えていない


アウトカムLDL 1 mmol/L低いことに対応するリスク比(95%CI)
アルツハイマー病0.57(0.27–1.17)
血管性認知症0.81(0.34–1.89)
全認知症0.66(0.34–1.26)
パーキンソン病1.02(0.26–4.00)

遺伝子を使った解析。いずれも95%CIが1をまたぎ有意ではない。「増やす方向の効果は見えなかった」までが言えること。

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観察研究とRCTの乖離Larsson 2018 / Cochrane 2016

逆に「防げる」とも言えない


研究デザインスタチンによる脂質治療と認知症
前向き
観察研究
認知症リスク低下と関連
(17件、RR 0.77、95%CI 0.63–0.95)
無作為化
比較試験
認知症発症を扱ったRCTは1件のみで、関連は示されなかった

Cochraneの著者結論:「晩年期に投与されたスタチンが認知機能低下や認知症を予防しないことについては、良質なエビデンスがある」。

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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰り


01
効くのは
中年期のLDL

晩年期の値との関連は弱い。下がってきたら「先ぶれ」かもしれない。

02
薬は「なる」も
「防ぐ」も未証明

RCTのメタ解析・Cochrane・遺伝子解析のいずれも支持していない。

03
日本では
これから

日本のGLはLDL目標に
認知症を挙げていない。
PREVENTABLE試験が
進行中。

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