外来患者指導シリーズ第36弾

「足腰を鍛えましょう」
だけでは、
転倒は減りません

転ばない体に足りない、もう一つの練習

バランス課題薬の棚卸し指輪っかテスト
医知創造ラボ 監修:今村久司(脳神経内科・総合内科専門医)
今日の結論TODAY'S CONCLUSION

鍛えるだけでは、
転倒は減らない

結論
  1. 「足腰を鍛えましょう」で終わらせない。ふらつく場面をつくる練習を混ぜる
  2. 転倒の原因薬を「降圧薬」とひとくくりにしない
  3. 転倒を診たら、その場でサルコペニアを拾う。指輪っかテストと握力で足りる
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この動画で答えることFIVE QUESTIONS

よく聞かれる
5つの疑問


1
転ばないために、どんな運動をすればいい?
2
どれくらいやればいいですか?
3
ふらつくのは、飲んでいる薬のせい?
4
ビタミンDは飲んだほうがいい?
5
自分の筋肉は、落ちていますか?
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① まず、運動そのものの効果DOES EXERCISE WORK

運動そのものは、
確かに転倒を減らす


見ているもの運動をした人の減り方確実性
転んだ回数23%減高い
1回以上転んだ人15%減高い
📋 ただし、ここで終わらない

「運動なら何でもいい」ではない。効くかどうかは種類で分かれる

108試験・23,407人のメタ解析。Sherrington C, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2019;1(1):CD012424.

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② ここが分かれ目IT DEPENDS ON THE TYPE

効くかどうかは、
運動の「種類」で決まる


運動の種類転んだ回数確実性
バランス・機能的運動24%減高い
バランス+筋力の併用34%減
太極拳19%減低い
筋力トレーニング単独不確実
ウォーキング・ダンス不確実

「筋力トレーニング単独」=バランス・機能的運動を伴わないもの。種類による差の検定 P=0.004。同上

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② ここを取り違えないUNCERTAIN IS NOT INEFFECTIVE

「不確実」は、
「効かない」ではない

筋トレとウォーキングは、転倒予防に無効だ

「まだ測れていない」という意味。
やめさせる理由にはならない

※ 確実に減ると分かっているのはバランス課題。だから「やめる」ではなく「足す」と伝えます

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③ 患者さんに示せる用量HOW MUCH, HOW LONG
2回 / 週

1回60分を、24週間。
これが実際に転倒が減った用量

高リスクの70歳以上670人の試験。太極拳で58%減、多種目運動で40%減
Li F, et al. JAMA Intern Med. 2018;178(10):1301-1310.

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④ 最初にすすめるのは、評価ではなく運動WHAT IS RECOMMENDED

「全員に多因子評価」は、
推奨されていない

運動介入

B推奨
(行うことを推奨)

中等度の確実性で、中等度の正味利益

多因子介入

C推奨
(個別に判断)

正味利益は小さい。転倒歴・併存疾患・本人の価値観をふまえて決める

看護師主導の多因子介入を86診療所・5,451人で試したSTRIDEでも、重症転倒外傷に差はつかなかった(P=0.25)
USPSTF. JAMA. 2024;332(1):51-57. / Bhasin S, et al. N Engl J Med. 2020;383(2):129-140.

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④ 誰を拾い上げるかWHO TO SCREEN

拾い上げの範囲は、
いまも割れている

世界転倒ガイドライン 2022

受診機会を
とらえて拾う

全員に助言はする。多因子評価は高リスクと判断した人にだけ

米国老年医学会 2024

65歳以上は
全員・毎年

転倒歴のある人だけに絞らない、という立場

どちらか一方が「世界標準」ではありません。
Montero-Odasso M, et al. Age Ageing. 2022;51(9):afac205. / Eckstrom E, et al. J Am Geriatr Soc. 2024;72(6):1669-1686.

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⑤ いちばん多い思い込みIS IT THE BP PILL

「降圧薬が原因」は、
ひとくくりにできない

ふらつくのは、血圧の薬のせいだ

調整後に転倒と有意に関連したのはループ利尿薬だけ

心血管薬転倒との関連(調整後)
ループ利尿薬1.36倍(上げる)
β遮断薬0.88倍(下げる)
その他の心血管薬一貫しない

131研究のメタ解析。de Vries M, et al. J Am Med Dir Assoc. 2018;19(4):371.e1.

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⑤ では、何を見るのかWHAT TO REVIEW

見るのは薬の種類と、
薬の「数」


  • 抗うつ薬 1.57倍・抗精神病薬 1.54倍・ベンゾジアゼピン 1.42倍
  • オピオイド 1.60倍・抗てんかん薬 1.55倍
  • 長期のプロトンポンプ阻害薬使用と、オピオイドの開始にも一貫した関連
📋 いちばん大きいのは「数」

ポリファーマシー 1.75倍。個別の薬剤クラスのどれよりも大きい

Seppala LJ, et al. J Am Med Dir Assoc. 2018;19(4):371.e11-371.e17. / 同 2018;19(4):372.e1-372.e8.

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⑤ この数字の限界ASSOCIATION, NOT CAUSATION

これは関連であって、
やめれば減る証拠ではない

1処方バイアスが調整されていない

著者自身が、異質性が大きいことと併せて明記している

2「どれが安全か」は分かっていない

SSRIや短時間作用型が安全かどうかは不明、と著者は書いている

患者さんに自己中断させない。減らせるものだけを一緒に減らす
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⑥ 増やせば効く、ではないVITAMIN D HAS A WINDOW

ビタミンDには、
上限も下限もある

毎日 800〜1000単位

15%減
(欠乏者では31%減)

毎日飲んだ場合のみ。まとめて飲む方法では効果がなかった

1000単位を超える増量

減らないうえ、
安全性に懸念

重症の転倒・入院を伴う転倒が、むしろ多かったという報告がある

Tan L, et al. BMC Geriatr. 2024;24(1):390. / Appel LJ, et al. Ann Intern Med. 2021;174(2):145-156.

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⑦ 転倒を診たら、その場でTWO STEPS, NO MACHINE

道具はいりません。
2手で「可能性あり」まで届く

1
👌STEP 1症例発見
ふくらはぎを両手で囲む(指輪っかテスト)/下腿周囲長 男性34cm・女性33cm未満
2
STEP 2筋力
握力 男性28kg・女性18kg未満(65歳以上)→ サルコペニアの可能性あり

確定診断には筋量測定(DXA・BIA)が要ります。ここで言えるのは「可能性あり」まで。
日本サルコペニア・フレイル学会「新しいサルコペニアの診断基準(AWGS 2025)のお知らせ」2025年11月11日

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⑦ 基準は2025年に変わったAWGS 2025

歩行速度は、
診断基準から外れた

歩くのが遅ければサルコペニア(AWGS 2019)

低筋量と低筋力がそろったときだけ診断。
身体機能はアウトカムとして測る

📋 転倒回とサルコペニアがつながる理由

「繰り返す転倒」は、評価を始めるトリガーとして明記されている

50〜64歳の握力カットオフ(男性34kg・女性20kg未満)も新設。Chen LK, et al. Nat Aging. 2025;5(11):2164-2175.

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明日の外来での順番THREE MOVES

運動をすすめ、薬を数え、
筋肉を拾う

1
🦵運動をすすめる最初の処方
片脚立ち・つぎ足歩き・方向転換を必ず混ぜる。週2回・60分
2
💊薬を数える棚卸し
利尿薬・睡眠薬・抗うつ薬・オピオイド・抗てんかん薬、そして総数
3
👌筋肉を拾うその場で
指輪っかテスト → 握力。「可能性あり」なら運動と栄養へ
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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰り


01
「足腰を鍛えましょう」で終わらせない。ふらつく場面をつくる練習を混ぜる
02
転倒の原因薬を「降圧薬」とひとくくりにしない
03
転倒を診たら、その場でサルコペニアを拾う。指輪っかテストと握力で足りる
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出典SOURCES

この動画の根拠


1

Sherrington C, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2019;1(1):CD012424.

2

Li F, et al. JAMA Intern Med. 2018;178(10):1301-1310.

3

US Preventive Services Task Force. JAMA. 2024;332(1):51-57.

4

Bhasin S, et al. N Engl J Med. 2020;383(2):129-140.

5

de Vries M, et al. J Am Med Dir Assoc. 2018;19(4):371.e1-371.e9.

6

Seppala LJ, et al. J Am Med Dir Assoc. 2018;19(4):371.e11/372.e1

7

Tan L, et al. BMC Geriatr. 2024;24(1):390.

8

Appel LJ, et al. Ann Intern Med. 2021;174(2):145-156.

9

Chen LK, et al. Nat Aging. 2025;5(11):2164-2175.(AWGS 2025)

日本語の要約は日本サルコペニア・フレイル学会の告知(2025年11月11日)。個々の治療方針は担当の先生の判断によります。

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