脳神経内科医が実際の数値で答えます|レントゲン・頭部CT・DATスキャン・PET・脳血管撮影の被ばく量一覧
「もう3回もCTを撮った。次はもう受けても大丈夫?」
「何回まで」という上限を探して不安になる患者さんは少なくありません。
医療被ばくに回数の上限は設けられていません
1回ごとに「その検査で得られる情報が被ばくに見合うか」で判断します。
物質1kgが吸収したエネルギー量。装置の出力(CTDIvol・Ka,r)や皮膚線量はこの単位で表す。
臓器ごとの感受性を加味し、全身への影響を1つの数値に換算したもの。検査の比較にはこちらを使う。
1 mSv(ミリシーベルト)= 1,000 μSv(マイクロシーベルト)——以降の表はすべてこの単位で読む。
宇宙から
大地から
ラドン・トロン等
食物から(合計 年2.1 mSv)
世界平均は年 2.4 mSv。東京―ニューヨーク間の飛行機往復でも 0.11〜0.16 mSv 浴びており、生活そのものが被ばく源になっている。
日本の医療被ばくの平均(環境省)。全国のCT装置は14,595台(Urikura 2023)。
2004年の Lancet 誌は「年間の検査頻度が世界で最も高い」日本を最高値と推計したが、著者自身が「リスクを過大評価している可能性は否定できない」と明記している。
この推計には複数の反論書簡が寄せられ、著者が誌上で返答した(Nagataki 2004 ほか)。
造血能低下・白内障のしきい線量(ICRP 118)
皮膚発赤のしきい線量(環境省資料)
一時的脱毛のしきい線量
全身1 Gy以上で嘔気・嘔吐——診断検査は mSv(1/1000)の桁でこの領域には届かない。
ICRP 103 の防護上の考え方。線量が下がるほどリスクも小さくなるが、ゼロになる境界(しきい値)は仮定しない。
職業被ばくと違い線量限度は適用されない。代わりに「正当化」「最適化」「診断参考レベル(DRL)」の3本柱で管理する。
| 検査 | 典型実効線量 | 自然放射線(年2.1 mSv)換算の目安 |
|---|---|---|
| 胸部単純X線写真 | 0.1 mSv | 約2〜3週間分 |
| 頭部CT(単純・中央値2 mSv) | 1.6〜2 mSv | 約9か月〜1年分 |
| 胸部CT | 6.1 mSv | 約3年分 |
| 腹部骨盤CT | 7.7 mSv | 約4年分 |
| 全身PET-CT | 22.7 mSv | 約11年分 |
| MRI | 0 mSv | 電離放射線ゼロ |
自然放射線の約2〜3週間分
典型実効線量0.1 mSv。日常診療で最も頻用される検査の1つ。
自然放射線の約1年分
Japan DRLs 2025:CTDIvol 67 mGy/DLP 1260 mGy・cm(頭部単純ルーチン)。水晶体は撮影範囲の工夫で守る。
累積30 mGy以上で白血病の相対リスク3.18、累積50〜74 mGyで脳腫瘍の相対リスク2.82。
1090万人規模の解析。CT被曝群のがん罹患率は非被曝群より24%高かった(IRR 1.24)。
今日CTを受ける小児1万人のうち、12年以内に1〜2人が血液腫瘍を発症する。
33%が生涯で5回以上、15%が累積実効線量100 mSv超、4%は250〜1375 mSvだった。
6151万人が9300万件のCTを受け(小児4.2%)、BEIR VIIモデルによる推計で生涯約10.3万件の放射線起因がんが発生すると予測(実測値ではない)。
DRL 190 MBq/185 MBqで3.94〜4.35 mSv(PMDA)
実効線量当量0.024 mSv/MBq(Booij 1998)×190 MBqでは約4.6 mSv。量の体系が異なる点に注意。
DRL 130 MBq×0.025 mSv/MBq=約3.3 mSv(実効線量当量)
脳血流SPECT(ECD 800 MBq/IMP 200 MBq)は投与量DRLのみで、実効線量は未確認。
実効線量21 μSv/MBq(Leide-Svegborn 2026)
実効線量18.60 μSv/MBq(Joshi 2014)
florbetaben・脳FDG-PETはDRL投与量のみが公表されており、実効線量係数は未確認のため定性にとどめる。
診断的脳血管撮影 470〜490 mGy、血管内治療(IVR)は1,000〜4,300 mGy。
平均1.00 Gy・最大4.80 Gy(Bärenfänger 2019)——一時的脱毛が実際に報告されている(Freysz 2014)。
2009年、米国で脳卒中診療のCT perfusionによる過剰被ばく事例が発覚し、FDAが安全性調査を行った。
この経緯はAJNR誌上で論説として取り上げられている。具体的な患者数や過剰線量の倍率は一次資料が未確認のため、ここでは事実関係のみを扱う。
超音波・MRIが第一選択だが、必要ならX線・CT・核医学を妊婦だからといって差し控えるべきではないと明記されている。
ガドリニウム造影剤投与後に授乳を中断する必要はない(ACOG 723)。
MRIの電離放射線被ばく
「造影剤のアレルギー・腎症」は放射線被ばくとは別の話。詳細は姉妹記事「CT造影剤アレルギー」「MRI造影剤アレルギー」へ。
正当化(本当に必要か)と最適化(線量を下げられないか)、診断参考レベル(DRL)で1回ごとに判断する。
「今回の頭部CTは自然放射線の約1年分です」と、日数・年数で伝えると理解されやすい。
① 日本で暮らすだけで年 2.1 mSv、頭部CTはその約1年分
② 症状のしきい値は Gy の桁——届くのは脳血管内治療などの透視手技だけ
③ 小児CTの発がんリスクは小さいがゼロではなく、1回ごとの正当化がすべての基本
詳しい解説や参考文献は概要欄・ブログ記事をご覧ください