RADIATION
CLINICAL & PATIENT GUIDE診療放射線による被ばくの実際

「頭部CTの被ばくは
何回までなら大丈夫?」

脳神経内科医が実際の数値で答えます|レントゲン・頭部CT・DATスキャン・PET・脳血管撮影の被ばく量一覧

脳神経内科専門医 監修
頭部CTの被ばくは何回までなら大丈夫?
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01INTRODUCTION検索されるその疑問に

「頭部CTは何回まで大丈夫?」——実は上限という考え方をしない

よくある質問

「もう3回もCTを撮った。次はもう受けても大丈夫?」

「何回まで」という上限を探して不安になる患者さんは少なくありません。

医学的な答え

医療被ばくに回数の上限は設けられていません

1回ごとに「その検査で得られる情報が被ばくに見合うか」で判断します。

頭部CTの被ばくは何回までなら大丈夫?
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02AGENDA本日のアジェンダ

本日のアジェンダ

01
単位と自然放射線——Gy・Sv と年2.1 mSv
02
症状はどこから出るか——確定的影響のしきい値
03
検査ごとの線量——胸部X線から小児CTまで
04
脳神経内科の各論——RI検査・PET・脳血管撮影
05
「何回まで」への答え
頭部CTの被ばくは何回までなら大丈夫?
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03UNITS総論・単位

Gy と Sv、mSv と μSv——被ばくの単位を1枚で

吸収線量:Gy(グレイ)

物質1kgが吸収したエネルギー量。装置の出力(CTDIvol・Ka,r)や皮膚線量はこの単位で表す。

実効線量:Sv(シーベルト)

臓器ごとの感受性を加味し、全身への影響を1つの数値に換算したもの。検査の比較にはこちらを使う。

1 mSv(ミリシーベルト)= 1,000 μSv(マイクロシーベルト)——以降の表はすべてこの単位で読む。

ICRP Publication 103 の考え方に基づく整理
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04NATURAL BACKGROUND総論・自然放射線

何もしなくても日本で年 2.1 mSv

0.30mSv

宇宙から

0.33mSv

大地から

0.48mSv

ラドン・トロン等

0.99mSv

食物から(合計 年2.1 mSv)

世界平均は年 2.4 mSv。東京―ニューヨーク間の飛行機往復でも 0.11〜0.16 mSv 浴びており、生活そのものが被ばく源になっている。

環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
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05MEDICAL EXPOSURE総論・医療被ばく

日本の医療被ばく平均は年 2.6 mSv——自然放射線より多い

2.6mSv/年

日本の医療被ばくの平均(環境省)。全国のCT装置は14,595台(Urikura 2023)。

2004年の Lancet 誌は「年間の検査頻度が世界で最も高い」日本を最高値と推計したが、著者自身が「リスクを過大評価している可能性は否定できない」と明記している。

この推計には複数の反論書簡が寄せられ、著者が誌上で返答した(Nagataki 2004 ほか)。

環境省/Berrington de González A, Darby S. Lancet. 2004.
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06DETERMINISTIC EFFECTS総論・確定的影響

症状はどこから出るのか——しきい値は Gy の桁

0.5 Gy

造血能低下・白内障のしきい線量(ICRP 118)

3〜6 Gy

皮膚発赤のしきい線量(環境省資料)

約4 Gy

一時的脱毛のしきい線量

全身1 Gy以上で嘔気・嘔吐——診断検査は mSv(1/1000)の桁でこの領域には届かない。

ICRP Publication 118(2012)/環境省 基礎資料
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07STOCHASTIC EFFECTS総論・確率的影響

発がんは「確率」で増える——LNT モデルの考え方

LNT(線形しきい値なし)モデル

ICRP 103 の防護上の考え方。線量が下がるほどリスクも小さくなるが、ゼロになる境界(しきい値)は仮定しない。

医療被ばくの管理方法

職業被ばくと違い線量限度は適用されない。代わりに「正当化」「最適化」「診断参考レベル(DRL)」の3本柱で管理する。

ICRP Publication 103 の考え方に基づく整理
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08DOSE TABLE各論・一覧表

検査別の典型実効線量(1枚の表)

検査典型実効線量自然放射線(年2.1 mSv)換算の目安
胸部単純X線写真0.1 mSv約2〜3週間分
頭部CT(単純・中央値2 mSv)1.6〜2 mSv約9か月〜1年分
胸部CT6.1 mSv約3年分
腹部骨盤CT7.7 mSv約4年分
全身PET-CT22.7 mSv約11年分
MRI0 mSv電離放射線ゼロ
RadiologyInfo.org(RSNA/ACR)/Smith-Bindman R, et al. Arch Intern Med. 2009.
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09CHEST X-RAY & BRAIN CT各論・日常の2検査

胸部単純写真と頭部CT——日常の2検査

胸部単純X線

自然放射線の約2〜3週間分

典型実効線量0.1 mSv。日常診療で最も頻用される検査の1つ。

頭部CT(単純)

自然放射線の約1年分

Japan DRLs 2025:CTDIvol 67 mGy/DLP 1260 mGy・cm(頭部単純ルーチン)。水晶体は撮影範囲の工夫で守る。

日本核医学会・J-RIME「Japan DRLs 2025」
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10PEDIATRIC CT各論・小児CT

子どものCTと発がん——3つの大規模コホート

英国・Pearce 2012

累積30 mGy以上で白血病の相対リスク3.18、累積50〜74 mGyで脳腫瘍の相対リスク2.82。

豪州・Mathews 2013

1090万人規模の解析。CT被曝群のがん罹患率は非被曝群より24%高かった(IRR 1.24)。

欧州9か国・EPI-CT 2023

今日CTを受ける小児1万人のうち、12年以内に1〜2人が血液腫瘍を発症する。

Pearce 2012/Mathews 2013/Bosch de Basea 2023(EPI-CT)
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11CUMULATIVE DOSE各論・反復CT

同じ人が何度も受けるとき——累積線量の実態

Sodickson 2009(成人3.1万人)

33%が生涯で5回以上、15%が累積実効線量100 mSv超、4%は250〜1375 mSvだった。

Smith-Bindman 2025(米国2023年)

6151万人が9300万件のCTを受け(小児4.2%)、BEIR VIIモデルによる推計で生涯約10.3万件の放射線起因がんが発生すると予測(実測値ではない)。

Sodickson A, et al. Radiology. 2009/Smith-Bindman R, et al. JAMA Intern Med. 2025.
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NEUROLOGY
PART 4脳神経内科の各論

脳神経内科でよく出す検査の
各論を数値で見る

① RI検査(DAT・MIBG・SPECT) | ② アミロイドPET | ③ 脳血管撮影・血管内治療
頭部CTの被ばくは何回までなら大丈夫?
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12RI STUDIES各論・RI検査

DATスキャン・心筋MIBG・脳血流SPECT

DATスキャン(123I-ioflupane)

DRL 190 MBq/185 MBqで3.94〜4.35 mSv(PMDA)

実効線量当量0.024 mSv/MBq(Booij 1998)×190 MBqでは約4.6 mSv。量の体系が異なる点に注意。

心筋MIBGシンチ(123I-MIBG)

DRL 130 MBq×0.025 mSv/MBq=約3.3 mSv(実効線量当量)

脳血流SPECT(ECD 800 MBq/IMP 200 MBq)は投与量DRLのみで、実効線量は未確認。

Booij J, et al. Eur J Nucl Med. 1998/Verberne HJ, et al. 2008/PMDA
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13AMYLOID PET各論・アミロイドPET

アミロイドPET——頭部CT の数回分

flutemetamol 185 MBq
4mSv

実効線量21 μSv/MBq(Leide-Svegborn 2026)

florbetapir 370 MBq
6.88mSv

実効線量18.60 μSv/MBq(Joshi 2014)

florbetaben・脳FDG-PETはDRL投与量のみが公表されており、実効線量係数は未確認のため定性にとどめる。

Joshi AD, et al. EJNMMI Res. 2014/Leide-Svegborn S, et al. Radiat Prot Dosimetry. 2026.
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14CEREBRAL ANGIOGRAPHY各論・血管撮影

脳血管撮影と血管内治療——Gy の桁に届きうる代表的な日常手技

基準点空気カーマ Ka,r(DRL)

診断的脳血管撮影 470〜490 mGy、血管内治療(IVR)は1,000〜4,300 mGy。

実測皮膚線量(機械的血栓回収術)

平均1.00 Gy・最大4.80 Gy(Bärenfänger 2019)——一時的脱毛が実際に報告されている(Freysz 2014)。

日本核医学会・J-RIME「Japan DRLs 2025」/Bärenfänger F, et al. Rofo. 2019/Freysz M, et al. Ann Dermatol Venereol. 2014.
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15CT PERFUSION各論・CT perfusion

脳卒中の CT perfusion——2009年の米国での過剰被ばく事例

2009年、米国で脳卒中診療のCT perfusionによる過剰被ばく事例が発覚し、FDAが安全性調査を行った。

この経緯はAJNR誌上で論説として取り上げられている。具体的な患者数や過剰線量の倍率は一次資料が未確認のため、ここでは事実関係のみを扱う。

Wintermark M, Lev MH. AJNR Am J Neuroradiol. 2010.
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16SPECIAL POPULATIONS特殊状況

妊娠・授乳・小児——
検査を「差し控えない」ために

妊娠中の画像検査(ACOG 723)

超音波・MRIが第一選択だが、必要ならX線・CT・核医学を妊婦だからといって差し控えるべきではないと明記されている。

授乳中の造影検査

ガドリニウム造影剤投与後に授乳を中断する必要はない(ACOG 723)。

ACOG Committee Opinion No. 723. Obstet Gynecol. 2017.
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17MRI IS DIFFERENT切り分け

MRI は電離放射線ゼロ/造影剤のリスクは別物

0mSv

MRIの電離放射線被ばく

「造影剤のアレルギー・腎症」は放射線被ばくとは別の話。詳細は姉妹記事「CT造影剤アレルギー」「MRI造影剤アレルギー」へ。

RadiologyInfo.org(RSNA/ACR)
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18THE ANSWER答え

「何回まで?」への答え——不要な検査を避け、必要な検査を怖がらない

医療被ばくの管理原則

正当化(本当に必要か)と最適化(線量を下げられないか)、診断参考レベル(DRL)で1回ごとに判断する。

患者説明の言い回し例

「今回の頭部CTは自然放射線の約1年分です」と、日数・年数で伝えると理解されやすい。

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19SUMMARY本日のまとめ

本日のまとめ:3つのポイント

① 日本で暮らすだけで年 2.1 mSv、頭部CTはその約1年分

② 症状のしきい値は Gy の桁——届くのは脳血管内治療などの透視手技だけ

③ 小児CTの発がんリスクは小さいがゼロではなく、1回ごとの正当化がすべての基本

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