HSV-2再活性化・髄液PCR・抑制療法のエビデンスを脳神経内科医が解説
無菌性髄膜炎で入院し、数日で自然に軽快した患者が、半年後にまた同じ髄膜炎で来院した
よく聞くと、過去にも同じ「原因不明の髄膜炎」を何度か繰り返している
毎回「ただのウイルス性髄膜炎」として片づけ、原因を詰めずに帰していないか
繰り返す無菌性髄膜炎には、名前と、しばしば共通の原因があります。
1944年、Pierre Mollaretが、発熱・頭痛・嘔吐の短期発作を反復する無菌性髄膜炎の3例を記載。髄液中の "cell ghosts(細胞の幽霊)" が特徴でした。
現在は良性反復性リンパ球性髄膜炎(BRLM)とほぼ同義。各発作は数日で自然軽快し、発作間欠期は無症状に戻ります。
PCR普及後、反復性無菌性髄膜炎の最多原因はHSV-2の再活性化と判明。仙髄の神経節に潜伏し、再活性化のたびに髄膜炎を起こします。
性器ヘルペスの既往がはっきりしない例も多く、髄膜炎が主体となることも。だから反復例ではまず髄液HSV-2 PCRを出すのが出発点です。
発熱・頭痛・項部硬直・羞明・嘔気個々の発作は典型的な髄膜炎像。おおむね2〜7日で自然軽快する
約半数で一過性の神経症状けいれん・複視・脳神経麻痺・幻覚・意識変容などを伴いうるが、後遺症なく回復するのが通常
発作間欠期は無症状過去にも繰り返している/性器ヘルペスの既往があれば、HSV-2再活性化を強く疑う
発作期はリンパ球優位の細胞増多・蛋白の軽度上昇・糖は正常。発症ごく早期には好中球優位のこともあり、経過とともにリンパ球優位へ移行します。
Mollaretが記載した大型の "cell ghosts" は活性化した単球。一過性に出現するが診断特異的ではなく、有無で診断を決められません。
髄液からHSV-2のDNAを検出(PCR陽性)して確定します。PCRの普及によって、HSV-2が最多原因と判明した経緯そのものです。
PCR陰性でもMollaret髄膜炎は否定できません。発作の時相やウイルス量で偽陰性が生じうるため、臨床像と経過を合わせて判断します。
Mollaret髄膜炎は除外診断の側面を持ちます。慢性・反復性の髄膜病変では肥厚性硬膜炎も鑑別に。
各発作は自然軽快し、予後は良性。診断が確定し脳炎が否定されれば、解熱・鎮痛・制吐・補液などの支持療法で軽快します。
初診では重症化しうるHSV脳炎との鑑別がつかないことが多く、実地では否定できるまで経験的にアシクロビルを開始するのが一般的です。
抑制療法の中止後にむしろ再発が増えた
1年目(投薬中)は差なし/2年目(中止後)に再発 HR 3.29(95% CI 1.06–10.21)=リバウンド現象と解釈(Aurelius 2012・二重盲検RCT・n=101)
RCTで再発予防のベネフィットは示されず、中止後のリバウンドも疑われました。各発作を急性期治療+支持療法で対応するのが基本です。
再発が頻回で生活への影響が大きい個別症例で検討する場合も、有効性が未確立であること・リバウンドの懸念を共有したうえで判断します。
| カテゴリー | 代表例 | 鑑別の手掛かり |
|---|---|---|
| 感染性 | HSV-1・その他ウイルス | 髄液ウイルスPCRパネル |
| 薬剤性(DIAM) | NSAIDs(特にイブプロフェン)・IVIG・ST合剤・モノクローナル抗体 | 投与との時間関係・中止で軽快・再投与で再燃 |
| 自己免疫 | SLE・ベーチェット病・原田病など | 全身症状・自己抗体・眼/皮膚所見 |
| 構造的 | 類上皮腫・皮様嚢腫・頭蓋底の交通 | 造影MRI(反復細菌性では特に重要) |
特に薬剤性は見逃されやすく、被疑薬の中止が直接効くため重要です。
自然軽快する無菌性髄膜炎を3回以上繰り返したら Mollaret髄膜炎。最多原因はHSV-2。
髄液HSV-2 PCRが鍵。ただし陰性でも否定せず、薬剤性・自己免疫・構造的要因を除外する。
予後は良性。長期バラシクロビル抑制療法は再発予防効果が示されず、ルーチンには勧めない。
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自然軽快する無菌性髄膜炎の反復を見たら、HSV-2を疑い、除外し、やりすぎない
より詳しい解説と参考文献は概要欄のブログ記事へ。また次回の動画でお会いしましょう