「異常なし」の患者にどう向き合うか【診療7ステップ】
ゴールは不安をゼロにすることではない。
見逃さない・害を作らない・関係を築くこと。
| 呼び名 | 意味 | ポイント |
|---|---|---|
| 不定愁訴 (≒MUS) | 検査で説明しきれない身体症状の総称 | 診断名ではない |
| 身体症状症 (DSM-5) | 症状+それへの過度な思考・感情・行動が6か月以上 | 説明不能は不問 |
| 病気不安症 | 症状は軽微/なし、重病への強い不安が主 | 不安が中心 |
外来の相談の多くは、検査で説明しきれない症状。器質原因が見つかるのは一部
Katon 1998/Hoedeman 2010(Cochrane):MUPSは受診の10〜35%、器質原因は1年で約10〜15%
CHAPTER 01 — STEP 1-2
不安の強い患者ほど「またこの人か」とアンカリングが働き、新規の器質疾患を見逃しやすい。診断の不確実性は外来で最も起こりやすいエラー要因です。
症状が増悪する・数が増える・性状が変わる――この変化は、過去に「異常なし」でも検査を組み直すトリガー。MUSは固定ラベルでなく暫定診断です。
| 領域 | レッドフラッグの例 |
|---|---|
| 全身 | 意図しない体重減少・発熱の遷延・寝汗・急速な全身状態の悪化 |
| 神経 | 突然の激しい頭痛・片麻痺・構音障害・進行性の局所症状・夜間増悪の頭痛 |
| 循環/呼吸 | 労作性胸痛・安静時/夜間の呼吸困難・失神 |
| 消化器 | 嚥下困難・吐血/下血・黄疸・新規で持続する腹痛 |
| 背景 | 50歳以降の新規発症・夜間痛・血算/炎症反応の異常・悪性腫瘍/免疫不全 |
低リスク患者への診断検査は、心配・不安・症状の持続をほとんど改善しません(14RCT・3,828例のメタ解析)。安心効果は短期的で、次の検査要求を生む悪循環に。
検査は「安心の道具」でなく「適応に基づき除外する道具」。適応分は初期にまとめ、陰性なら引き際を決める(受診は小幅に減りうる)。
「検査は全部異常なし。心配ないですよ」=突き放し・"気のせい"と受け取られる
「重大な病気は否定できました=大事な情報です。そのうえで症状は本物。次は"なぜ起きるか"を一緒に考えましょう」
CHAPTER 02 — STEP 3-5
「センサーの感度が上がると、本来気にならない信号も強く感じる」「自律神経は不安が続くと実際に体の症状を作る」「ハードの故障でなくソフトの不調」――比喩で納得を作ります。
再解釈(reattribution)を押しつけても単独では効果は限定的。効果を決めるのは患者-医療者の関係性です。
「今は危険なサインはない。ただ次のどれかが出たら、様子を見ずに受診を」と不確実性を共有しながら安全を担保します。
① 突然・これまでと違う強い症状 ② 増悪する/新しい症状が次々加わる ③ 体重が急減・出血・発熱が続く → 迷えば♯7119/無ければ慌てず予定受診
症状起点の受診は「訴える→受診できる」随伴性を強めます。短時間でも定期受診を先に設定すると臨時受診が減ります。
コンサルテーションを介した管理で医療費 約33〜53%減・身体機能改善(Smith 1986/1995)。鍵は"治す"より"支える(caring)"。
CHAPTER 03 — STEP 6-7
| 対象 | ツール | メモ |
|---|---|---|
| 身体症状の負荷 | SSS-8 / PHQ-15 | 外来は短いSSS-8が実用的 |
| うつ | PHQ-9 | 協働ケアで改善 |
| 不安 | GAD-7 | 全般性・病気不安に |
| 社会的要因 | 独居・孤立の聴取 | 死亡リスク26〜32%↑ |
「うちでは異常がないので精神科へ」=突き放し・原因=精神という決めつけ
「心と体はつながっています。眠り・自律神経の専門家にも。体は私が診続けますので一緒に」
NGワード:「気のせい」「ストレスでしょう」「うちでは診られない」
器質疾患を除外し、検査の引き際を決める。「本当にMUSか」を問い続ける。
症状を肯定して説明し、悪化サインを手渡し、予定起点の定期受診へ。
うつ・不安・孤独を評価し、見捨てない協働の紹介へ。完璧より誠実で持続可能。
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本動画は教育目的の解説です。診療判断は各施設の体制に応じてご判断ください。
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