医知創造ラボ

不定愁訴・頻回受診への対応

「異常なし」の患者にどう向き合うか【診療7ステップ】

実践 脳神経内科医が解説 所要 約10分
今日の問いTODAY'S POINT

「検査は異常なし」で
終わらせていないか?

結論

ゴールは不安をゼロにすることではない。
見逃さない・害を作らない・関係を築くこと。

医知創造ラボ02
03
まず用語を整理DEFINITIONS

「不定愁訴」と診断名を分けて考える


呼び名意味ポイント
不定愁訴
(≒MUS)
検査で説明しきれない身体症状の総称診断名ではない
身体症状症
(DSM-5)
症状+それへの過度な思考・感情・行動が6か月以上説明不能は不問
病気不安症症状は軽微/なし、重病への強い不安が主不安が中心
医知創造ラボ03
REALITY — DAILY PRACTICE
3040%

外来の相談の多くは、検査で説明しきれない症状。器質原因が見つかるのは一部

Katon 1998/Hoedeman 2010(Cochrane):MUPSは受診の10〜35%、器質原因は1年で約10〜15%

医知創造ラボ04

CHAPTER 01 — STEP 1-2

01

まず見極める

06
STEP1 器質疾患の除外RULE OUT FIRST

「本当にMUSか?」を問い続ける


不安の強い患者ほど「またこの人か」とアンカリングが働き、新規の器質疾患を見逃しやすい。診断の不確実性は外来で最も起こりやすいエラー要因です。

📋 再評価の合図

症状が増悪する・数が増える・性状が変わる――この変化は、過去に「異常なし」でも検査を組み直すトリガー。MUSは固定ラベルでなく暫定診断です。

医知創造ラボ06
07
見逃せないサインRED FLAGS

この所見は再評価のトリガー


領域レッドフラッグの例
全身意図しない体重減少・発熱の遷延・寝汗・急速な全身状態の悪化
神経突然の激しい頭痛・片麻痺・構音障害・進行性の局所症状・夜間増悪の頭痛
循環/呼吸労作性胸痛・安静時/夜間の呼吸困難・失神
消化器嚥下困難・吐血/下血・黄疸・新規で持続する腹痛
背景50歳以降の新規発症・夜間痛・血算/炎症反応の異常・悪性腫瘍/免疫不全
医知創造ラボ07
08
STEP2 検査の引き際AVOID IATROGENIC HARM

「念のため検査」で
安心はさせられない


低リスク患者への診断検査は、心配・不安・症状の持続をほとんど改善しません(14RCT・3,828例のメタ解析)。安心効果は短期的で、次の検査要求を生む悪循環に。

📋 ここがポイント

検査は「安心の道具」でなく「適応に基づき除外する道具」。適応分は初期にまとめ、陰性なら引き際を決める(受診は小幅に減りうる)。

医知創造ラボ08
09
「異常なし」の伝え方HOW TO TELL

同じ結果でも伝え方で変わる


「検査は全部異常なし。心配ないですよ」=突き放し・"気のせい"と受け取られる

「重大な病気は否定できました=大事な情報です。そのうえで症状は本物。次は"なぜ起きるか"を一緒に考えましょう」

医知創造ラボ09

CHAPTER 02 — STEP 3-5

02

説明し、つなぐ

11
STEP3 陽性の説明モデルPOSITIVE EXPLANATION

除外で終わらせず
「なぜ起きるか」を語る


「センサーの感度が上がると、本来気にならない信号も強く感じる」「自律神経は不安が続くと実際に体の症状を作る」「ハードの故障でなくソフトの不調」――比喩で納得を作ります。

📋 注意

再解釈(reattribution)を押しつけても単独では効果は限定的。効果を決めるのは患者-医療者の関係性です。

医知創造ラボ11
12
STEP4 safety nettingSAFETY NETTING

悪化サインを手渡す


「今は危険なサインはない。ただ次のどれかが出たら、様子を見ずに受診を」と不確実性を共有しながら安全を担保します。

🚨 この3つが出たら受診

① 突然・これまでと違う強い症状 ② 増悪する/新しい症状が次々加わる ③ 体重が急減・出血・発熱が続く → 迷えば♯7119/無ければ慌てず予定受診

医知創造ラボ12
13
STEP5 予定起点の定期受診SCHEDULED VISITS

「症状が出たら」を
「決めた日に」


症状起点の受診は「訴える→受診できる」随伴性を強めます。短時間でも定期受診を先に設定すると臨時受診が減ります。

📋 エビデンス

コンサルテーションを介した管理で医療費 約33〜53%減・身体機能改善(Smith 1986/1995)。鍵は"治す"より"支える(caring)"

医知創造ラボ13

CHAPTER 03 — STEP 6-7

03

背景を診て、託す

15
STEP6 背景のスクリーニングSCREEN THE BACKGROUND

頻回受診の背景を評価する


対象ツールメモ
身体症状の負荷SSS-8 / PHQ-15外来は短いSSS-8が実用的
うつPHQ-9協働ケアで改善
不安GAD-7全般性・病気不安に
社会的要因独居・孤立の聴取死亡リスク26〜32%↑
医知創造ラボ15
16
STEP7 紹介の出し方HOW TO REFER

紹介は「見捨てない協働」


「うちでは異常がないので精神科へ」=突き放し・原因=精神という決めつけ

「心と体はつながっています。眠り・自律神経の専門家にも。体は私が診続けますので一緒に」

NGワード:「気のせい」「ストレスでしょう」「うちでは診られない」

医知創造ラボ16
17
まとめSUMMARY

7ステップを3章


01
見極める

器質疾患を除外し、検査の引き際を決める。「本当にMUSか」を問い続ける。

02
説明し、つなぐ

症状を肯定して説明し、悪化サインを手渡し、予定起点の定期受診へ。

03
背景を診て、託す

うつ・不安・孤独を評価し、見捨てない協働の紹介へ。完璧より誠実で持続可能。

医知創造ラボ17

✚ 医知創造ラボ

不安を消すのではなく、
関係を築く。

本動画は教育目的の解説です。診療判断は各施設の体制に応じてご判断ください。

🔔 チャンネル登録

次回:「【一般・家族向け】不安なときの上手な病院のかかり方」