医知創造ラボ

パーキンソン病の
Braak仮説

なぜ手の震えより先に、便秘・嗅覚障害が来るのか

監修:今村久司/神経内科専門医・指導医
今日のテーマTODAY'S POINT

なぜ震えより先に、
便秘や嗅覚の低下が来るのか?

結論

パーキンソン病は黒質だけの病気ではなく、病理が「下から上へ」広がる。
それを説明するのがBraak仮説です。

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この動画でわかることAGENDA

5つの疑問で、すっきり理解

1
なぜ震えより先に便秘・嗅覚低下が出る?
2
Braak仮説とは何か(病理の6病期)
3
前駆症状はどれだけ先行し、何割が発症?
4
「腸から脳へ」はどこまで本当か
5
body-first / brain-first と受診の目安
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CHAPTER

01

黒質だけの病気ではない

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基礎知識SECTION 01 — KEY POINT

手の震えは、
氷山の一角かもしれない


手の震えや動作の遅さは、脳深部にある黒質のドパミン神経が減って起こります。けれど多くの患者さんは、その何年も前から便秘・嗅覚低下・睡眠中の異常行動を経験しています。

📋 ここがポイント

黒質の障害は氷山の一角。水面下では、もっと前から、もっと「下」の場所で病理が静かに進んでいる可能性があります。

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CHAPTER

02

Braak仮説とは何か

病理の進展BRAAK STAGING

病理は「下から上へ」6つの病期で広がる


下から上へ 1 病期1〜2|嗅球・迷走神経背側核 対応症状:嗅覚の低下・便秘 3 病期3〜4|橋・中脳・黒質に到達 ここで初めて運動症状(震え・動作の遅さ)が表に 5 病期5〜6|辺縁系・大脳新皮質へ 認知・精神症状などが現れることも
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02
なぜ広がる?SECTION 02 — MECHANISM

異常タンパクが、隣の細胞へ
「種」のように伝わる


病理が場所から場所へ広がる仕組みとして注目されるのが、異常なα-シヌクレインが隣の神経細胞へ次々に伝わるプリオン様伝播です。

🔬 主な証拠

患者さんの脳に移植された健康な神経細胞に、14年を経てレビー小体様の封入体が出現。合成α-シヌクレインをマウスに少量入れると細胞間に伝播した実験もあります。

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CHAPTER

03

前駆症状を見る

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前駆症状PRODROMAL SIGNS

鍵となる3つのサイン


サインなぜ起こる関わる部位
便秘腸の神経が早くから影響を受け、頑固な便秘が先行する迷走神経・腸
嗅覚の低下嗅球が初期から侵され、においを感じにくくなる嗅球
RBD夢に合わせて大声・激しい体動が出る睡眠中の異常行動下部脳幹
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KEY NUMBER
73.5%

RBDの方が12年でパーキンソン症候群へ

年あたり約 6.3% が移行

出典:Postuma RB, et al. Brain. 2019(iRBD多施設前向きコホート)

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CHAPTER

04

腸から脳へは本当か

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経路の証拠GUT–BRAIN AXIS

「配線」を断つと、リスクが下がる


腸と脳幹は迷走神経という太い配線でつながっています。マウスでは、腸に入れた異常タンパクがBraakの順序どおり脳へ伝わり、迷走神経を切ると伝播が止まりました。

📊 ヒトの疫学

胃の手術で迷走神経を根元から切った人は、20年以上の追跡でパーキンソン病リスクが低下(HR 0.53、95%CI 0.28–0.99)。腸内細菌の関与も示唆されます。

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CHAPTER

05

2つの軌道と受診の目安

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2つの始まり方TWO TRAJECTORIES

腸から始まる型 vs 脳から始まる型


 body-first(体から)brain-first(脳から)
始まる場所腸・末梢から「下から上へ」脳側から始まる
RBD伴いやすい伴いにくい
前駆症状便秘・嗅覚低下が先行しやすい必ずしも先行しない

※ Braakらの「鼻と胃の2経路(dual-hit仮説)」の現代的な改訂版。始まり方は人によって違います。

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受診の目安WHEN TO SEE A DOCTOR

心配しすぎず、重なったら相談


🏥
脳神経内科に相談を

便秘・嗅覚低下など複数が重なるとき。とくに睡眠中に大声で暴れるRBDが疑われるなら

🏠
1つだけなら様子見でOK

便秘や嗅覚低下が1つだけ。加齢・生活習慣・薬・鼻の病気でも普通に起こる

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✚ 医知創造ラボ|今日の3つの持ち帰り

01
末梢から始まる

運動症状が出る何年も前から、腸や嗅球で静かに始まっている可能性。

02
下から上へ進む

Braak仮説の進展モデル。ただし全員には当てはまらず、2つの軌道が提唱されています。

03
重なれば相談を

1つだけなら病気ではありません。複数+RBDが加わるなら脳神経内科へ。

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