止血後のアスピリンを、どう判断するか
急性期の主役は止血と灌流の回復です。
ただし画像所見だけを根拠に、抗血栓療法を一律に省略することもできません。
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分水嶺梗塞は、二つの動脈灌流域の境界に梗塞があることを述べているだけで、なぜ起きたかを述べていません。
分水嶺領域に梗塞があることと、原因が純粋な低灌流であることは同義ではありません。
| タイプ | 主な機序 | 特徴 |
|---|---|---|
| 内側分水嶺梗塞 | 血行力学的破綻 | ICA・MCAの狭窄や閉塞が強い |
| 皮質分水嶺梗塞 | 塞栓の関与が大きい | 小皮質梗塞の合併が多い |
| 両者の併存 | 低灌流+塞栓 | 微小塞栓のwashout障害が加わる |
Yong SW, et al. Stroke. 2006(MCA領域脳梗塞946例の検討)
心臓手術後の脳卒中で
両側分水嶺梗塞がMRIで見つかった割合
Gottesman RF, et al. Stroke. 2006(心臓手術後の脳卒中98例)
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 両側分水嶺梗塞の検出率 | MRI拡散強調画像 48%/CT 22% |
| 術中の平均血圧が術前より10mmHg以上低下 | 両側分水嶺梗塞である可能性が 4.1倍 |
| 両側分水嶺梗塞例の死亡(他パターン比) | 17.3倍 |
単純CTで「はっきりしない」ことは、分水嶺梗塞がないことを意味しません。
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純粋な循環不全型の脳梗塞では、まず脳血流を低下させている原因そのものを是正します。
止血・循環血液量の回復・貧血の補正・心拍出量の維持。抗血栓薬は原因治療ではありません。
低血圧と循環血液量減少は、臓器機能を支えるために必要な全身灌流を維持できるよう是正すべきである
— AHA/ASA 急性期脳梗塞ガイドライン(推奨クラスⅠ・レベルC-EO)
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発症した梗塞の治療目標として、平均動脈圧70mmHg以上を保つ
70mmHgは周術期脳卒中の「予防」として提案された値。発症後の一律の治療目標ではない
Benesch C, et al. Circulation. 2021(周術期脳卒中に関するAHA/ASA科学的声明)
| アウトカム | 結果 |
|---|---|
| 7日目の神経学的改善 | 良好だった |
| 90日の機能予後 | 改善しなかった |
| 追跡MRIでの脳出血 | 昇圧群で多かった(6.6% 対 0%) |
ESO血圧管理ガイドライン2025年アップデートは、再灌流療法を受けていない例への昇圧薬のルーチン使用を推奨していません。
| 対象 | 提案される閾値 |
|---|---|
| 最近の脳卒中の既往、有意な脳血管疾患 | ヘモグロビン 8g/dL |
| 急性周術期脳卒中、活動性出血、循環動態不安定 | ヘモグロビン 8〜9g/dL |
これらは質の高い無作為化試験で確立された閾値ではありません。「脳梗塞だから正常値まで上げる」という対応にも根拠はありません。
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| 手術からの日数 | 手術部位出血 | 評価 |
|---|---|---|
| 1〜10日 | 14.3% | リスク高 |
| 11〜90日 | 2.4% | 相対的に低い |
Voelkel N, et al. Stroke. 2017(術後134例の後ろ向き研究)。血栓溶解が可能と判断された選択症例であり、活動性出血中の安全性を保証するものではありません。
| 治療 | 位置づけ |
|---|---|
| アスピリン単剤 | 活動性出血中は保留。止血後は開始を検討する |
| DAPT | ルーチンには行わない |
| 治療量の抗凝固療法 | 低灌流そのものに対しては不要 |
| 心房細動などへの抗凝固 | 独立した適応があれば別途判断する |
| 静脈血栓予防量 | 脳梗塞治療とは別問題として扱う |
術後の分水嶺梗塞にもDAPTを行うべきだ
対象は軽症・推定動脈硬化性で血栓溶解を受けていない患者。内側型と皮質型の差も有意ではない
Liu C, et al. Cell Rep Med. 2026(INSPIRES試験サブグループ解析・分水嶺梗塞1,266例/交互作用P=0.41)
一過性の誘因が明確で、動脈硬化性狭窄も塞栓源もなく、低灌流の再発リスクが解消されている場合、生涯継続する利益は不明です。
これは「不要と証明された」という意味ではありません。病型特異的なエビデンスがないため、後日あらためて再評価します。
止血・循環血液量の回復・貧血補正・心拍出量の維持が中心です。
分水嶺型でも塞栓は併存します。血管評価は必須です。
活動性出血中は投与せず、止血後に単剤を検討します。
Powers WJ, et al. Stroke. 2019;50(12):e344-e418.
Benesch C, et al. Circulation. 2021;143(19):e923-e946.
Liu C, et al. Cell Rep Med. 2026;7(2):102596.
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