医知創造ラボ

術中の出血・低血圧による
分水嶺梗塞
抗血栓療法は必要か

止血後のアスピリンを、どう判断するか

医師向け 監修:脳神経内科専門医 所要 約9分
今日のテーマTODAY'S POINT

血栓が原因でないなら、
抗血栓療法は不要なのか?

結論

急性期の主役は止血と灌流の回復です。
ただし画像所見だけを根拠に、抗血栓療法を一律に省略することもできません。

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この動画でわかることAGENDA

4つの章で、判断の筋道を整理します

1
分水嶺梗塞は「病因」ではない
2
急性期に最優先すべきこと
3
血圧と輸血をどう考えるか
4
抗血栓療法をどう判断するか
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CHAPTER 01

CHAPTER

01

分水嶺梗塞は病因ではない

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基本の確認DISTRIBUTION ≠ ETIOLOGY

分水嶺梗塞という言葉が
示しているのは場所だけです


分水嶺梗塞は、二つの動脈灌流域の境界に梗塞があることを述べているだけで、なぜ起きたかを述べていません。

📋 ここが判断の分かれ目

分水嶺領域に梗塞があることと、原因が純粋な低灌流であることは同義ではありません

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機序の違いCOMPARISON

内側型と皮質型では、機序が違う


タイプ主な機序特徴
内側分水嶺梗塞血行力学的破綻ICA・MCAの狭窄や閉塞が強い
皮質分水嶺梗塞塞栓の関与が大きい小皮質梗塞の合併が多い
両者の併存低灌流+塞栓微小塞栓のwashout障害が加わる

Yong SW, et al. Stroke. 2006(MCA領域脳梗塞946例の検討)

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KEY NUMBER
48%

心臓手術後の脳卒中で
両側分水嶺梗塞がMRIで見つかった割合

Gottesman RF, et al. Stroke. 2006(心臓手術後の脳卒中98例)

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データで見るDETECTION

CTでは、半分以上を見落とす


項目結果
両側分水嶺梗塞の検出率MRI拡散強調画像 48%/CT 22%
術中の平均血圧が術前より10mmHg以上低下両側分水嶺梗塞である可能性が 4.1倍
両側分水嶺梗塞例の死亡(他パターン比)17.3倍

単純CTで「はっきりしない」ことは、分水嶺梗塞がないことを意味しません。

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CHAPTER 02

CHAPTER

02

急性期に最優先すべきこと

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急性期治療FIRST PRIORITY

抗血栓薬では、
脳血流は回復しません


純粋な循環不全型の脳梗塞では、まず脳血流を低下させている原因そのものを是正します。

📋 治療の中心

止血・循環血液量の回復・貧血の補正・心拍出量の維持。抗血栓薬は原因治療ではありません

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ACTION LIST

まず確認し、是正する項目


出血源を止血する
循環血液量を回復させる
貧血を補正し、酸素運搬能を確保する
心拍出量を維持する
低酸素血症・不整脈を是正し、不要な降圧を中止する
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GUIDELINE
"

低血圧と循環血液量減少は、臓器機能を支えるために必要な全身灌流を維持できるよう是正すべきである

— AHA/ASA 急性期脳梗塞ガイドライン(推奨クラスⅠ・レベルC-EO)

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CHAPTER 03

CHAPTER

03

血圧と輸血をどう考えるか

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COMMON MYTH

その数値、何のための値ですか


発症した梗塞の治療目標として、平均動脈圧70mmHg以上を保つ

70mmHgは周術期脳卒中の「予防」として提案された値。発症後の一律の治療目標ではない

Benesch C, et al. Circulation. 2021(周術期脳卒中に関するAHA/ASA科学的声明)

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誘発性高血圧INDUCED HYPERTENSION

短期の改善は、予後の改善とは限らない


アウトカム結果
7日目の神経学的改善良好だった
90日の機能予後改善しなかった
追跡MRIでの脳出血昇圧群で多かった(6.6% 対 0%)

ESO血圧管理ガイドライン2025年アップデートは、再灌流療法を受けていない例への昇圧薬のルーチン使用を推奨していません。

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貧血の補正TRANSFUSION

輸血閾値の目安


対象提案される閾値
最近の脳卒中の既往、有意な脳血管疾患ヘモグロビン 8g/dL
急性周術期脳卒中、活動性出血、循環動態不安定ヘモグロビン 8〜9g/dL

これらは質の高い無作為化試験で確立された閾値ではありません。「脳梗塞だから正常値まで上げる」という対応にも根拠はありません。

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CHAPTER 04

CHAPTER

04

抗血栓療法をどう判断するか

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DECISION FLOW

まず血管評価、次に時期


主幹動脈閉塞はあるか あり なし 血栓回収療法を検討 止血・灌流再建が中心 止血後にアスピリン単剤を検討
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静注血栓溶解TIMING MATTERS

「術後」は一括りにできません


手術からの日数手術部位出血評価
1〜10日14.3%リスク高
11〜90日2.4%相対的に低い

Voelkel N, et al. Stroke. 2017(術後134例の後ろ向き研究)。血栓溶解が可能と判断された選択症例であり、活動性出血中の安全性を保証するものではありません。

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実務の整理SUMMARY TABLE

やること・やらないこと


治療位置づけ
アスピリン単剤活動性出血中は保留。止血後は開始を検討する
DAPTルーチンには行わない
治療量の抗凝固療法低灌流そのものに対しては不要
心房細動などへの抗凝固独立した適応があれば別途判断する
静脈血栓予防量脳梗塞治療とは別問題として扱う
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HOW TO READ

分水嶺梗塞にDAPTが効く、という報告


術後の分水嶺梗塞にもDAPTを行うべきだ

対象は軽症・推定動脈硬化性で血栓溶解を受けていない患者。内側型と皮質型の差も有意ではない

Liu C, et al. Cell Rep Med. 2026(INSPIRES試験サブグループ解析・分水嶺梗塞1,266例/交互作用P=0.41)

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長期方針LONG-TERM

導入する判断と、
続ける判断は別です


一過性の誘因が明確で、動脈硬化性狭窄も塞栓源もなく、低灌流の再発リスクが解消されている場合、生涯継続する利益は不明です。

📋 誤解しないために

これは「不要と証明された」という意味ではありません。病型特異的なエビデンスがないため、後日あらためて再評価します。

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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰りポイント


01
主役は抗血栓療法ではない

止血・循環血液量の回復・貧血補正・心拍出量の維持が中心です。

02
画像だけで病因を決めない

分水嶺型でも塞栓は併存します。血管評価は必須です。

03
出血の時期で分けて考える

活動性出血中は投与せず、止血後に単剤を検討します。

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参考文献・出典

この動画の参考資料

[1]

Powers WJ, et al. Stroke. 2019;50(12):e344-e418.

[2]

Benesch C, et al. Circulation. 2021;143(19):e923-e946.

[3]

Liu C, et al. Cell Rep Med. 2026;7(2):102596.

全13件の参考文献は、概要欄のブログ記事に掲載しています。

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ご視聴にあたってのお願い

この動画は医療従事者向けの一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。
実際の判断は患者の状態と関係各科との協議に基づいて行ってください。

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