医知創造ラボ

高齢者のてんかん重積、
どこで麻酔薬・挿管
踏み切るか

分岐の軸は 発作型 × 意識レベル

医知創造ラボ 脳神経内科医・救急医・集中治療医向け 2026年8月
今日のテーマTODAY'S POINT

複数の薬で止まらない高齢者に、
麻酔薬を入れるべきか

結論

決め手は発作型と意識レベルです。

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この動画でわかることAGENDA

本日のアジェンダ


1
難治性=麻酔・挿管なのか
2
誰に導入すべきか
3
麻酔薬は予後を悪くするのか
4
高齢・ADL低下は差し控えの理由か
5
導入前の3ゲートと導入後の4原則
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CHAPTER

第1章

難治性=麻酔・挿管なのか

KEY NUMBER
71.7%

難治性重積545例のうち、
挿管されなかった割合

Beuchat I, et al. Neurology. 2022(SENSEレジストリ・9施設996例)

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実際の管理REAL-WORLD DATA

挿管しなくても、
半数以上が良好転帰だった


中欧3か国9施設の前向きレジストリで、成人996例のうち545例が難治性重積に進展しました。

📋 難治例545例の内訳

挿管されなかった例が71.7%、良好転帰が52.7%でした。

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判断のばらつきPRACTICE VARIATION

同じ重症度でも、
病院が違えば判断が変わる


米国の4施設
25.4%
スイスの1施設
9.75%

併存症も重症度スコアも均質な集団で、治療的昏睡の使用率だけが2.6倍違いました。

Alvarez V, et al. Neurology. 2016(前向き多施設・施設のオッズ比11.3)

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第2章

誰に導入すべきか

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患者選択FISCH U, ET AL. FRONT NEUROL. 2026

病型ごとに、麻酔薬の位置づけは違う


重積の病型麻酔薬導入の位置づけ
けいれん性の難治性重積正当化される
subtle SE(昏睡+発作性脳波)正当化される
NCSE with coma(昏睡を伴う)個別化して判断
NCSE without coma(意識が保たれる)役割は乏しい
焦点運動発作性重積・EPC役割は乏しい
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予後を分けるものLEVEL OF CONSCIOUSNESS

致死率を分けたのは、
意識レベルだった


意識障害あり
33%
覚醒している
8.2%

両側強直間代発作のみで終わった症例では、死亡はゼロでした。

Leitinger M, et al. Epilepsia. 2019(人口ベース研究・成人221例・年齢中央値69歳)

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よくある誤解TRINKA E, ET AL. EPILEPSIA. 2015

「30分で全身麻酔」はどの病型の話か


📋 t1・t2(ILAE 2015の2つの時間点)

t1=治療を始める時点、t2=神経損傷のリスクが生じる時点。

重積が30分続いたら、病型を問わず全身麻酔へ

5分・30分が決まっているのはけいれん性重積だけ

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第3章

麻酔薬は予後を悪くするのか

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よく引用される研究THE CITED STUDY

麻酔薬群では、感染も死亡も多かった


ICUの重積171例のうち、37%に持続静注麻酔薬が使われました。

📋 報告された差

重積中の感染は43%11%、死亡の相対危険は2.88でした。

Sutter R, et al. Neurology. 2014(6年コホート・エビデンスクラスIII)

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THE CAVEAT
"

難治性重積で追加調整すると、麻酔薬のリスクと転帰に関する結果は有意でなくなった

— Sutter R, et al. Neurology. 2014(原著が自ら記した限界)

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前向き研究による検証CONFIRMATION

転帰の差は、
元の重症度で説明された


前向き多施設の成人145例で、難治例の47%に治療的昏睡が使われました。

📋 読み替えのポイント

麻酔薬を避ければ助かるのではなく、麻酔薬を必要とする病態が重いのです。

Ferlisi M, et al. Epilepsy Behav. 2026(交絡調整後に群間差は消失)

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第4章

高齢・ADL低下は差し控えの理由か

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入院前ADLで分けるとPREADMISSION STATUS

治療制限は3倍多いのに、
1年後の結果はほぼ同じ


項目機能障害あり機能障害なし
治療制限の決定35.7%12%
ICU死亡率19.6%13.1%
1年後に機能が悪化しなかった割合42.9%44.1%

Vieille T, et al. Epilepsy Behav. 2023(けいれん性重積でICU入室した成人499例)

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実際に効いた因子MULTIVARIATE ANALYSIS

1年後の転帰不良と関連した因子


致死的な併存症
2.92
脳の器質的障害
2.75
難治性であること
2.19
入室時の臓器不全
2.08
入院前の機能障害
0.61

※ 最下段のみ有意差なし(95%信頼区間 0.31〜1.22)

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COMMON MYTH

予後スコアで、適応は決められない


STESSやEMSEが高いから、麻酔導入は見送る

スコアは予後の見積もりを家族と共有する 材料であって、適応の判定装置ではない

Giovannini G, et al. Seizure. 2017(治療反応性の予測は全スケールで精度不良)

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第5章

導入前の3ゲートと導入後の4原則

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BEFORE YOU START

踏み切る前に確認する3つのゲート


本当に非けいれん性重積か(陽性的中率34%)
病因は治療しうるか(自己免疫性脳炎14.3%/脳腫瘍63.6%)
最初のBZDを十分量入れたか(オッズ比2.5)
最大のレバーは上流にあります
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AFTER YOU START

導入すると決めた後の4原則


1遅らせない

確定後の遅延は転帰不良と関連します

2目標は発作停止

burst suppression が優れる証拠はない

3期間は最短に

24〜48時間は専門家合意にすぎません

4持続脳波で離脱

維持期と離脱期の脳波監視が必須です

⏱ 期間を最短にすることは、そのまま廃用対策になります
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忘れられがちな論点DECONDITIONING & ACP

発作を止めることと、
廃用を防ぐことは対立しない


集中治療関連筋力低下は長期不動化と高齢が危険因子で、退室後2年まで残ることがあります。

📋 平時にできること

事前指示を持つ患者は中央値39%にとどまります。

Hermans G, et al. Crit Care. 2015/Sutter R, et al. Crit Care Med. 2020

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まとめSUMMARY

今日の3つの持ち帰りポイント


01
難治≠麻酔

難治性重積の71.7%は挿管されず、52.7%が良好転帰

02
発作型と意識

意識が保たれたNCSEでは、麻酔薬の役割は乏しい

03
ADLは基準外

入院前の機能障害は、1年後機能低下を予測しませんでした。

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ご視聴にあたってのお願い

本動画は医療従事者向けの教育・知識整理であり、個々の診療方針を保証するものではありません。
引用した研究の大半は観察研究です。薬剤の用量・投与速度は各施設のプロトコルに従ってください

ご視聴ありがとうございました

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