透析患者の11.5%、終末期がん患者の36%——今、誰が危ないのかを整理する
維持血液透析患者の11.5%、終末期がん患者の36%でチアミン欠乏が実測されている。
CHAPTER 1
高木兼寛は日本海軍の脚気に対し疫学的手法で栄養欠乏を原因と考え、タンパク質を増やした新兵食を1884年に採用させた。
旧来食の龍驤は乗員376名中169名(44.9%)が脚気を発症し25名(6.7%)が死亡。新兵食の筑波は乗員333名中14名(4.2%)の発症にとどまり、死亡はゼロだった。
高木自身の仮説はタンパク質不足説であり、ビタミンB1欠乏の同定はそれから30年以上あとである。介入が効いたことと、仮説が正しかったことは別である。
鈴木梅太郎は米糠中の脚気予防有効成分を「オリザニン」と命名し、1911年に論文発表した(日本農芸化学会 公式サイト)。
CHAPTER 2
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 集積規模 | 非アルコール性Wernicke脳症 13研究・1,036例 |
| 死亡率の幅 | 減量手術コホートの0.3%からがん手術例の40%まで |
| 若年層 | 減量手術コホートは平均26〜50歳、嘔吐・嚥下障害が主な誘因 |
| 高リスク術式 | 十二指腸〜近位空腸を含む術式 |
維持血液透析/終末期がん/アルコール使用障害除外・入院退役軍人(血漿低値)。単施設の横断研究であり外挿に注意する。
| 集団 | 所見 |
|---|---|
| 維持血液透析 | 不足しやすい機序は摂取低下・吸収障害・異化亢進・ダイアライザークリアランス |
| 終末期がん | 有意に関連したのは血清アルブミン低値のみ(調整OR 2.05、95%CI 1.10〜3.90) |
| アルコール使用障害除外・入院退役軍人 | 面接・診察を完了した164名の86.59%が臨床基準を満たし、臨床基準のみでは過剰診断となりうる |
妊娠悪阻はチアミン欠乏によるWernicke脳症の素因であり、未治療ではKorsakoff症候群へ進行しうる。
安定期・外来のループ利尿薬使用心不全患者では、標準基準値によるチアミン欠乏の有病率はきわめて低い。リスクは病期と治療状況に依存する。
CHAPTER 3
体内のチアミン貯蔵は25〜30 mgと限られ、腸内細菌の産生は2%未満。欠乏食で2〜3週間、重症患者では72時間以内に欠乏が進行しうる(生理的貯蔵は約18日で枯渇するとの報告もある)。
「先にチアミン」を支える強固なエビデンスがある
支えるエビデンスは症例報告・症例集積の水準を超えない。低血糖患者へのブドウ糖投与を遅らせることは推奨されない
米国VA救急の後ろ向き研究では、先にブドウ糖輸液を受けた症例群でも90日以内のWernicke脳症は1例も同定されなかった。
維持血液透析の11.5%、終末期がん患者の36%でチアミン欠乏が確認されている。
消化管手術・処置後だけで13研究・1,036例が集積され、最多誘因は嘔吐だった。
体内貯蔵は25〜30 mgしかなく、数日から数週間の嘔吐・絶食で欠乏が成立しうる。
ご視聴にあたってのお願い
この動画は医療者向けの一般的な情報提供であり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。
実臨床での判断は各施設のガイドライン・専門医の判断に従ってください。
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次回:脚気の
症状と検査を解説
次回もお楽しみに