医師が採点するアンチエイジング 第11回

プラセンタ注射・サプリで、老化は防げる? 医師の採点とやること

2026年10月7日時点の研究と公的資料に基づく一般向けの資料です。
特定の商品・サービス・医療機関は扱わず、利益相反もありません。

ことば プラセンタ(胎盤エキス):胎盤から取り出した成分。国内の注射薬はヒトの胎盤から作られた医薬品。サプリや化粧品にはブタなどを使ったものもある1。/偽薬(プラセボ):見た目は同じで、薬の成分が入っていないもの。偽薬でも症状が良くなることがあるため、試験では偽薬との差を見る。/検査値と病気:しわの幅や血液の数値が良くなっても、病気や死亡が減るとは限らない。/特定生物由来製品:ヒト由来の原料を使い、感染症に特に注意して使った記録を残す薬1。

判定
老化予防・美容目的は「まだ分からない」
健康な人が老化予防や美容を目的に、注射やサプリを使う場合。国が認めた使い道(病気の治療)は採点の外です
物差し老化予防・美容目的のプラセンタ(注射・サプリ)
①根拠の強さC 老化予防を目的に、死亡・骨折・認知症などを調べた比較試験は、調べた範囲では見つからない。ヒトの試験は小規模・短期で、検査値や自覚スコアが中心。結果は一致せず2,3、皮膚の試験は企業の関与が目立つ4-6
②効果の大きさ小〜不明 更年期症状・疲労などで偽薬より良かった試験はあるが小さく、ほてりでは偽薬と差がない試験もある2,7。老化予防としての効果は未確認
③安全性中(長期のデータがない) ショック(頻度不明)と理論上のvCJD伝播のおそれが添付文書にあり1、使用後の献血制限もある13。試験は最長24週で、長期の安全性は調べられていない3
④費用・手間出典なし 自費診療の価格は公的な一次資料が見つからず書かない。参考:薬価は2mL1管で200円と189円12

①根拠の目盛り:A=ヒトの試験で病気や死亡などが減った/B=ヒトの試験で体の機能が良くなった/C=小規模な試験まで、または比較試験で予防効果が示されなかった/D=動物や細胞のみ。検査値だけの改善はBに数えません。採点は診療ガイドラインではありません。

なぜ「まだ分からない」か
  • ヒトの試験は10〜315人ほど、期間は2〜24週。試験ごとに結果が分かれる2,3,7
  • 更年期の飲むサプリは偽薬のない試験が多く15、皮膚の試験は企業の資金・企業所属の著者が関わるものが目立つ4-6
  • 「効かないと証明された」わけではない。調べたのは英語の題名・抄録で、登録簿と英語以外は未検索
参考(採点の外):国が認めた使い道
  • 注射2製剤の効能は、更年期障害・乳汁分泌不全と、慢性肝疾患の肝機能改善。保険が使えるのはこの使い道1
  • 添付文書に老化・美容の記載は、調べた範囲でない1。美容目的は保険外9
  • 承認外の使用は、国内未承認などを広告で明示するよう国が求めている8
  • サプリ・化粧品は別のルール:「若返り」などは医薬品的な効能の例。化粧品は、うるおい・はりなど決められた範囲まで10,11

今日からやること

  1. 更年期のつらい症状や、肝臓の病気の治療は、医師に相談する。注射は、その使い道なら国が認めた医薬品です。
  2. 老化予防や美容のために自費の注射を考えるときは、「ヒトでの根拠は乏しい」ことを知った上で、承認された使い道ではないこと・副作用・献血の制限を医師に確認する。受けた日は記録しておく。
  3. サプリや化粧品に、医薬品のような効き目は期待しない。「若返る」とうたう広告は、根拠を確かめる。

過敏症の既往がある人は、注射を使えません1。使うときは医師にアレルギーの経歴を伝える。献血:2026年10月1日の受付分から、注射歴だけで期間を決めずに断る運用は終わり、最後に使った日から3か月は待つ扱いです。最終的な可否は当日の問診と医師の判断。最新の運用は日本赤十字社で確認してください13,14。

  1. PMDA. 医療用医薬品 添付文書情報(メルスモン注:2023年12月改訂 第9版/ラエンネック注:2026年1月改訂 第2版). 2026年10月7日閲覧.
  2. Choi SJ, et al. Integr Med Res 2022;11(4):100891. PMID 36338608
  3. Papp S, et al. Nutrients 2025;17(24). PMID 41470802
  4. Nagae M, et al. Nutrients 2020;12(6). PMID 32512710
  5. Watanabe T, et al. JMIR Dermatol 2023;6:e51070. PMID 37966883
  6. Nguyen NH, et al. Complement Ther Med 2025;95:103271. PMID 41138781
  7. Lee KK, et al. Evid Based Complement Alternat Med 2012;2012:130875. PMID 21966297
  8. 厚生労働省. 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版).
  9. 厚生労働省医政局. 美容医療に関する現状について. 2021年4月1日.
  10. 厚生省(当時). 医薬品の範囲に関する基準. 昭和46年6月1日 薬発第476号.
  11. 厚生労働省. 化粧品の効能の範囲の改正について. 平成23年7月21日 薬食発0721第1号.
  12. 厚生労働省. 薬価基準収載品目リスト(注射薬・令和8年10月1日適用).
  13. 厚生労働省. 献血制限の見直しについてのQ&A(令和8年10月).
  14. 日本赤十字社. 報道発表 献血基準の変更について. 2026年9月14日.
  15. Koike K, et al. Climacteric 2013;16(1):28-35. PMID 22920723

一般的な医学情報で、個別の診断・治療に代わるものではありません。治療方針は担当の先生の判断によります。