医師が採点するアンチエイジング 第12回

幹細胞・エクソソームで、老化は防げる? 医師の採点とやること

2026年10月8日時点の研究と公的資料に基づく一般向けの資料です。
特定の商品・サービス・医療機関は扱わず、利益相反もありません。

ことば 間葉系幹細胞:骨髄・脂肪・へその緒などから取れ、骨・脂肪・軟骨の細胞になれる。/エクソソーム・培養上清:細胞が出す小さな袋と、細胞を育てた液(細胞は含まない)。/承認:国が効果と安全性を審査して認めること(計画を国に出すのとは別)16。/フレイル:加齢で体力・筋力・予備力が落ち、要介護や入院になりやすい状態。

判定
老化予防・美容目的は「まだ分からない」
健康な人が自費で使う場合。国が承認した再生医療等製品(特定の病気の治療)は採点の外
物差し老化予防・美容目的の幹細胞(点滴・注射)とエクソソーム・培養上清(塗る・注射)
①根拠の強さC 健康な人の老化予防を調べた比較試験は、調べた範囲で見つからない。幹細胞の比較試験はフレイルの高齢者で30〜148人、6〜9か月1-4。肌の試験は15〜48人ほどの小さな試験が中心6-8
②効果の大きさ小〜不明 フレイルの試験で差が出たのは一部の用量・時点で、偽薬のない試験もある1,2,4。肌は見た目の評価や機器の計測値が中心
③安全性低 未承認の施設で、失明・脊髄の病変・感染・死亡を含む報告がある11-13。エクソソームの注射のあとの皮膚の壊死・しこりの報告もある14
④費用・手間出典なし 調べた範囲では、価格の公的な資料が見つからないため書かない

①根拠の目盛り:A=ヒトの試験で病気や死亡などが減った/B=ヒトの試験で体の機能が良くなった/C=小規模な試験まで、または比較試験で予防効果が示されなかった/D=動物や細胞のみ。検査値だけの改善はBに数えません。採点は診療ガイドラインではありません。

なぜ「まだ分からない」か
  • フレイルの試験は「健康な人の老化予防」とは別の問い。15・30・148人の試験は、同じ企業の関係者が著者1,2,5
  • 管理された試験では、目立った害は主に一時的な発熱9,10。自費の治療の安全性の根拠にはならない
  • 国内の事案:自分の脂肪から取った幹細胞の治療(慢性の痛みが目的)の投与中に亡くなった事案があり、国が命令を出した。老化予防目的ではなく、死因は調べている途中19-21
  • ただし「効かないと証明された」という意味ではない。分からないことが、まだ多い
「届け出」と「承認」は別
  • 自費の幹細胞治療は、始める前に医療機関が計画を国に出す。国が個別の計画の効果・安全性を認めたのではない16
  • 承認された再生医療等製品の一覧に、調べた範囲で老化予防・美容の目的のものは見当たらない(2014・2017年度分は未確認)23
  • エクソソーム・培養上清:学会の指針では、この法律の審査の外18。承認された医薬品はないと国が周知17
  • 米国の規制当局も、エクソソームをうたう未承認品で重い副作用の報告があると公表15

今日からやること

  1. 「健康な人の老化予防を確かめた試験は見つかっていない」ことを知った上で考える。
  2. 受ける前に、医療機関と治療名を国の「再生医療等提供機関一覧」で確かめる22(掲載は効果の保証ではない16)。
  3. エクソソームや培養上清を受けるなら、何が入っているのか、どこで作られたのかを医師に確認する。
  4. フレイルが心配なときは、まず運動や食事など体の土台づくりから始める。

点滴や注射のあとに、発熱・息苦しさ・皮膚の痛みや色の変化・しこりなどが出たら、すぐに医療機関を受診してください。

  1. Tompkins BA et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2017;72(11):1513-1522. PMID 28977399
  2. Ruiz JG et al. Cell Stem Cell 2026;33(3):393-404.e4. PMID 41747733
  3. Zhu Y et al. Stem Cell Res Ther 2024;15(1):122. PMID 38679727
  4. Nguyen LT et al. EBioMedicine 2026;127:106268. PMID 42019090
  5. Golpanian S et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 2017;72(11):1505-1512. PMID 28444181
  6. Park GH et al. J Cosmet Dermatol 2023;22(12):3418-3426. PMID 37377400
  7. Lee HJ et al. Ann Dermatol 2014;26(5):584-91. PMID 25324650
  8. Estupiñan B et al. J Cosmet Dermatol 2025;24(5):e70208. PMID 40414798
  9. Lalu MM et al. PLoS One 2012;7(10):e47559. PMID 23133515
  10. Thompson M et al. EClinicalMedicine 2020;19:100249. PMID 31989101
  11. Kuriyan AE et al. N Engl J Med 2017;376(11):1047-1053. PMID 28296617
  12. Bauer G et al. Stem Cells Transl Med 2018;7(9):676-685. PMID 30063299
  13. Hartnett KP et al. JAMA Netw Open 2021;4(10):e2128615. PMID 34618037
  14. AlBargawi S et al. J Cosmet Dermatol 2025;24(8):e70387. PMID 40820962
  15. U.S. FDA. Public Safety Notification on Exosome Products. 2019年12月6日.
  16. 厚生労働省. 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版). 令和8年3月.
  17. 厚生労働省. 事務連絡(幹細胞培養上清液及びエクソソーム等を用いる医療について). 令和6年7月31日.
  18. 日本再生医療学会. 細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス. 2024年4月30日.
  19. 厚生労働省. 報道発表(緊急命令). 令和7年8月29日.
  20. 厚生労働省. 報道発表(改善命令). 令和8年1月23日.
  21. 厚生労働省. 第119回再生医療等評価部会 資料2. 令和8年8月19日.
  22. 厚生労働省. 再生医療等提供機関一覧(2026年10月8日閲覧).
  23. PMDA. 新再生医療等製品の承認品目一覧(年度別・同日閲覧).

一般的な医学情報で、個別の診断・治療に代わるものではありません。治療方針は担当の先生の判断によります。