✚ 医知創造ラボ / 認知症×生活習慣病シリーズ 第6弾
肥満と認知症
40代の肥満と、70代のやせは
同じ体重の話ではない
「太っていると認知症になる」も「高齢者はふっくらしているほうがよい」も、
体重を測った時期が違うだけのことがあります。
1いま、わかっていること
1
40代〜50代に太っていた人では、のちの認知症が多いと報告されています。たくさんの研究をまとめた解析でも、日本人を対象にした研究でも、同じ向きの結果が出ています。
2
同じ研究でも、60代・70代で測ると、この関係は出ていません。見えているのは、あくまで中年期の体重の話です。
3
高齢だけを見ると、太っている人のほうが認知症が少なく見えることがあります。ただしこれは、太ってよいという意味ではありません(→ 3番)。
出典: 16の研究をまとめた解析(Anstey 2011, Obes Rev)/英国ホワイトホールII(Singh-Manoux 2018)/日本のJPHC研究(Tashiro 2023)/英国CPRD 約196万人(Qizilbash 2015)。数字は動画・記事のほうに載せています
240代と70代で、見え方が逆になる
40〜50代
この時期の肥満は、のちの認知症と関連が報告されています。手を打てるのは、ここです。
60〜70代
同じ人たちを同じ方法で測っても、この時期の体重では関連が出ません。ここで見えているのは、別のものです。
この図でいちばん伝えたい一文
問題は中年期の体重。高齢のやせは、別の話です。
3なぜ、逆に見えるのか
認知症では、診断されるずっと前から体重が減っていきます。高齢になってから測った体重は、生活の結果であると同時に、すでに始まっている病気の結果でもあります。だから「太っているほうが安全」とは読めません。
約8年前
英国の研究では、認知症と診断される8年ほど前から、のちに診断される人とされない人とで体重に差が現れ始めていました。
20年より前
38の研究をまとめた解析では、診断の20年より前に測ったときだけ「太っている人ほど多い」という向きになりました。診断が近いほど、逆向きに見えます。
出典: 英国ホワイトホールII(Singh-Manoux 2018, Alzheimers Dement)/38コホート約130万人をまとめた解析(Kivimäki 2018, Alzheimers Dement)
「やせているから認知症になる」ではありません
順番が逆です。認知症が始まっていることが先で、体重が減るのがあとです。ですから、高齢の方に「認知症を防ぐために太りましょう」と勧める根拠には、どこにもなりません。
4体重が減ってきたときは、原因を調べる
半年で5%
思い当たる理由がないのに半年で5%以上減ったら、受診のときに伝えてください。60kgの方なら3kg、50kgの方なら2.5kgです。
月1回
同じ曜日・同じ時間・同じ服装で測って記録します。1回の増減ではなく、半年の「向き」を見ます。
「体重が減った=認知症」ではありません
がん・甲状腺の病気・気分の落ち込み・お薬の影響・食事量の低下など、原因はたくさんあります。まず順番に調べます。「年のせい」で片づけないことが大事です。
5「やせれば防げる」とは、まだ言えません
10年の減量の取り組みでも、差は出ていません
食事と運動の集中的な取り組みを10年続け、平均で11年あまり追いかけた試験では、認知機能の障害が起きた割合に差がありませんでした。ただし対象は2型糖尿病のある方たちで、中年期の一般の方を対象にした試験ではありません。
「だから体重は気にしなくてよい」でもありません
体重を管理する理由は、認知症とは別のところにあります——血圧・血糖・ひざ・心臓です。そしてその血圧と糖尿病は、認知症の危険因子として別に数えられています。遠回りに見えて、つながっています。
出典: Look AHEAD試験(Espeland 2017, Neurology)
6よくある心配
Q
「太っていると、認知症になるのですか?」
ここで紹介した研究は、体重をくじ引きで割りつけた試験ではなく、たくさんの方を長く観察して比べた研究です。言えるのは「関連が報告されている」ところまでです。
Q
「高齢の親が、少しふっくらしています。安心してよいですか?」
太っているから安全、という意味ではありません。見ていただきたいのは、いまの体型より、体重の変化の向きです。
Q
「お腹まわりは、関係ありますか?」
中年期にお腹の脂肪の厚みを測った研究では、体格の指標で調整したあとも関連が残りました。ただし内臓脂肪が脳を縮ませる、とまでは言えていません。
7結局、どうすればよいか
中年期は、増やさない
40代〜50代が、手を打てる時期です。
いま増えつつあるなら、そこが出番です。
高齢期は、減りに気づく
減ってきたら、まず原因を調べます。
太ることを目標にはしません。
減らし方は、主治医と
何kg・どうやっては、
この図では扱っていません。
目標は人によって違います。
この図の「1%」について。認知症の危険因子は14あり、すべてなくせたとしたら認知症の約45%が減る(かもしれない)という推計があります。そのうち肥満の分は1%とされています。ただしこれは集団のものさしで、一人ひとりの大きさではありません。因子どうしは重なっていて(肥満は高血圧・糖尿病・運動不足と重なります)、足し合わせても全体にはなりません。
また、ここで扱った研究はほとんどが観察研究で、体重を割りつけて比べた試験ではありません。したがって「太っていると認知症になる」ことも「やせれば認知症を防げる」ことも、証明されてはいません。示されているのは関連です。
監修: 今村久司(脳神経内科専門医・総合内科専門医)/医知創造ラボ
本図は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。
目標体重や減量の具体的な方法については、担当の先生にご相談ください。すでに服用中のお薬を、自己判断で変えないでください。