かかりつけ医・一般内科向けにやさしく解説
「痛くないから」が危ない
糖尿病性末梢神経障害のフットケア
教育「単独」ではなく、毎日の点検・定期診察・統合ケアで足を守る
神経障害が進むと、痛み・熱さ・圧迫という「警報」が働かなくなる防御知覚の消失(LOPS)が起こります。靴擦れ・低温やけど・深爪・異物が無痛のまま潰瘍化し、感染から切断へ静かに進むことがあります。「痛くないから大丈夫」ではなく、痛くないからこそ毎日見る――この転換が指導の出発点です。
5予防の5本柱(毎日の習慣)
1
👁️
毎日、足を見て・触って点検する
入浴後など決まったタイミングで、足の甲・裏・指の間・かかと・爪を確認。見えない足裏は鏡か家族の目を借りる。探すのは傷・水疱・赤み・腫れ・色の変化。「痛くないからこそ見る」
2
👟
素足を避け、靴の中を確認する
屋内でも素足で歩かない(画鋲・小石・熱源に無痛で踏み込むため)。靴を履く前に手を入れて異物を確認。足に合う靴を選び、新しい靴は短時間から慣らす。治療靴・免荷インソールは高リスク例では医療者の処方で。
3
✂️
たこ・魚の目・深爪は自分で処置しない
感覚が鈍った足を自分で削ると、無痛のまま皮膚を傷つけ潰瘍の入口になる。爪は深爪せず直線的に切り、たこ・魚の目は医療機関・フットケア外来で。乾燥・ひび割れは保湿を。
4
🔥
低温やけどを防ぐ
熱さの感覚が鈍っているため、「熱くない」と感じる温度でも長時間で低温やけどを起こし、無痛のまま潰瘍化する。湯たんぽ・こたつ・電気毛布・カイロを足に直接長時間当てない。湯温は温度計や手(家族)で確認。
5
🚭
清潔・禁煙・血糖コントロールを土台に
足を清潔に保ち、乾燥・蒸れを避ける。禁煙・血糖コントロールは血流と治癒力を守り、フットケア全体の土台になる(血糖・食事・運動の生活指導は別記事で詳述)。
🤝
教育「単独」ではなく、「統合ケア」で守る ― 本記事の核心
患者教育単独で潰瘍・切断を確実に減らせるという頑健なエビデンスは十分ではない(Dorresteijnコクランレビュー)。教育+定期的な足の診察+適切な履物+(高リスクでは)集学的フットケアという「統合ケア」で初めて有効になる。外来では10gモノフィラメント・音叉でLOPSを評価し、リスクに応じて点検頻度を調整する。
!見逃してはいけない危険サイン(無痛でも受診)
数日〜1週間で治らない傷・水疱・ひび割れ
感染赤み・腫れ・熱感・ジュクジュク・膿・悪臭
色調皮膚の黒ずみ・紫・蒼白(壊死・虚血を疑う)
血流足が冷たい・拍動が弱い(末梢動脈疾患の合併)
⚠️ 「痛くないから大丈夫」ではありません。上のサインがあれば、痛みがなくてもかかりつけ・糖尿病・皮膚科・形成外科・血管外科へ
出典: Dorresteijn JAN, et al. Cochrane Database Syst Rev 2014;(12):CD001488. PMID 25514250/Bus SA, et al. Guidelines on the prevention of foot ulcers (IWGDF 2023). Diabetes Metab Res Rev 2024;40(3):e3651. PMID 37302121/Armstrong DG, et al. N Engl J Med 2017;376(24):2367-75. PMID 28614678/Boulton AJM, et al. Diabetic neuropathies: ADA statement. Diabetes Care 2005;28(4):956-62. PMID 15793206/Boulton AJM, et al. Comprehensive foot examination and risk assessment. Phys Ther 2008;88(11):1436-43. PMID 19137633/Singh N, et al. Preventing foot ulcers in patients with diabetes. JAMA 2005;293(2):217-28. PMID 15644549
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