外来の数分で、何をどの順に伝えるか
入口はALT 30、
目標は「%」で語る
脂肪肝(MASLD)の生活指導 外来指導テンプレート
外来患者指導テンプレート・シリーズ 第24弾
「脂肪肝ですね、痩せましょう」で終わると、患者さんは何kg減らせばよいのかも、いつ検査を受け直すのかも分からないまま帰ります。入口を健診のALT 30にそろえ、目標を体重の「%」で示す——この2つで、外来の会話が変わります。
3外来指導の核心3点
1
🧪
入口をそろえる ― 健診のALT 30
日本肝臓学会「奈良宣言2023」は、健診等でALTが30を超えたらまずかかりつけ医を受診し、必要なら専門診療科へ、という診療連携を呼びかけている。求めているのは原因の検索であって、脂肪肝と決めつけることではない
2
🔍
ALTが正常でも安心とは限らない
日本の多施設研究では、ALTが30以下でもFIB-4が高い例で進行した線維化が高率に見つかり、2型糖尿病を併存するとさらに高くなった。逆に糖尿病がなくFIB-4も低ければ進行例は認められなかった。「様子を見る」対象にしない
3
📉
減量は「体重」ではなく「%」で語る
生検で確かめた前向き研究で、減った割合と組織の改善が段階的に対応した。ただし5%を達成できたのは約3割最初から10%を提示しない——達成できない目標は脱落を招くだけ。
減量の目標 ― 何%で何が変わるか
まず
5%
肝臓の状態が目に見えて良くなる。70kgの方なら3.5kg
次に
7%
炎症の所見まで改善する。生活習慣介入の試験で示された
さらに
10%
硬さ(線維化)が戻る方も出てくる
ただし5%も簡単ではありません(達成は約3割)。だからこそまず5%から「10%減らないと意味がない」という説明は、達成できない患者さんを脱落させるだけ。減った分だけ返ってきますと伝える。
実務のポイント
🏋️運動は「歩く」でなくてよい
有酸素運動と筋力トレーニングを比べた系統的レビューでどちらも肝脂肪を改善。筋トレのほうが体への負担は軽い。目安は週3回・1回40〜45分・12週間
膝が痛い方にも根拠を持って提示できる
🧍やせていても脂肪肝はある
日本の健診集団を新分類で層別した研究で、体格が標準以下の方にも一定の割合で見つかった。体格を理由に除外しない
予備的報告。有病率の断定には使わない
🍶飲酒歴は「責めずに」聞く
MASLD・MASH・MetALDという枠組みで、代謝の異常と飲酒が重なる病態が正面から位置づけられた。見ておく検査が変わるため正確な量が要る。
責めるためではなく層別化のため
⏱️症状がない時期こそ次回を決める
脂肪肝はほぼ無症状で、勝負どころは専門外来ではなく一般外来。米国の診療パスウェイもプライマリケアでの層別化を重視する。
次の検査日を決めて帰す
⚠️
「脂肪肝の死因の第1位は心血管」とは言わない
生検で確定した大規模コホートで超過死亡にもっとも寄与していたのは肝臓の外のがんと肝硬変であり、論文は心血管疾患と肝細胞癌の寄与を「限定的」と明記している。心血管を語るなら、同じ集団の別解析(主要心血管イベントが全病期で増加)を出典にすること。
⚠️ 同一コホートの2つの論文を混ぜないこと。これが、この領域で誤引用を避ける要点。
!約束の線引き ― 何を言い、何を言わないか
言ってよいこと
入口は健診のALT 30(まず原因を検索する)
目標は今の体重の5%から(70kgなら3.5kg)
運動は筋トレでもよい(週3回・40〜45分)
肝臓の外の病気も増える(がん・心血管)
言ってはいけないこと
単純な脂肪肝なら心配ない
ALTが正常なら大丈夫
痩せているから脂肪肝ではない
死因の第1位は心血管
黄疸・腹水・下腿浮腫・消化管出血を疑う所見/ALTが正常でも2型糖尿病+FIB-4高値
生活指導の枠を超えるサインは、様子見の対象にしない
出典: 日本肝臓学会「奈良宣言2023」(医療関係者向け)/Kawanaka M, et al. Diagnostics (Basel) 2025;15(13):1591. PMID 40647590/Rinella ME, et al. J Hepatol 2023;79(6):1542-1556. PMID 37364790/Vilar-Gomez E, et al. Gastroenterology 2015;149(2):367-378.e5. PMID 25865049/Promrat K, et al. Hepatology 2010;51(1):121-129. PMID 19827166/Hashida R, et al. J Hepatol 2017;66(1):142-152. PMID 27639843/Miwa T, et al. J Clin Med 2024;13(4):1158. PMID 38398471/Simon TG, et al. Gut 2021;70(7):1375-1382. PMID 33037056/Simon TG, et al. Gut 2022;71(9):1867-1875. PMID 34489307/Kanwal F, et al. Gastroenterology 2021;161(5):1657-1669. PMID 34602251/MASLD診療ガイドライン2026(日本消化器病学会・日本肝臓学会編)
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