本図は医療従事者向けの情報整理であり、患者さんご自身の判断のために使用しないでください。用量・禁忌・モニタリング間隔は2026年8月時点の電子添文およびガイドラインの記載に基づく整理で、個々の患者さんの治療方針を決定するものではありません。電子添文とガイドラインは改訂されます。実際の処方判断では必ず最新の原典をご確認ください。
なお本図の「モニタリング間隔」の一部は電子添文とガイドラインの記載を実務的に合成したもので、ガイドラインが数値として規定したものではありません。
ここで上乗せが不要になる例があります。順に潰してから薬の話に進みます。
| 潰すもの | 基準・数値 |
|---|---|
| ① 採血条件 | 高TG血症の診断基準は空腹時TG 150 mg/dL以上/随時TG 175 mg/dL以上。TG 400 mg/dL以上または随時採血ではnon-HDL-Cを管理目標に用いる |
| ② 二次性高TG血症 | 二次性脂質異常症は全脂質異常症の30〜40%を占める。洗い出す前にフィブラートを足さない |
| ③ スタチン自体の限界 | スタチンのTG低下効果は10〜20%程度。「増量したのにTGが動かない」は失敗ではなく想定内 |
出典: 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版(第2章 表2-1・第3章/p.120本文)
TG変化%÷LDL-C変化%比は、ベースラインTG 150未満で 0.0±0.3、150–250で 0.5±0.2、250超で 1.2±0.3。TG 250超では全スタチンで22–45%低下する一方、150未満ではほとんど動きません。LDL-C変化とTG変化の相関は r=0.14 にとどまります。
出典: Stein EA, et al. Am J Cardiol. 1998;81(4A):66B-69B./Nicholls SJ, et al.(VOYAGER)
目的をカルテに宣言してから薬を選びます。膵炎予防とASCVD残余リスクでは、選ぶ薬が変わります。
出典: Kirkpatrick CF, et al. 2026/動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版・包括的リスク管理チャート2025
随時TG +89 mg/dL ごとに急性膵炎 HR 1.17(95%CI 1.10–1.24)。TG 177–265 で HR 2.3、TG 443以上で HR 8.7。一方で絶対発生率は最高区分でも12件/1万人年です。相対リスクだけを見せると過大に伝わります。
出典: Pedersen SB, et al. JAMA Intern Med. 2016;176(12):1834-1842.
対象は2型糖尿病+TG 200–499+HDL-C 40以下、スタチン下のLDL-C中央値78、n=10,497、追跡中央値3.4年。
出典: Das Pradhan A, et al. N Engl J Med. 2022;387(21):1923-1934.(PROMINENT)
apoBが上がった=粒子数が減っていない。狙った脂質はすべて下がったのに一次エンドポイントが動かなかった読みどころはここです。
対象は TG 200–499 mg/dL で、TG 500以上は試験対象外です。したがってPROMINENTは膵炎予防目的を否定した試験ではありません。
「腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者に、本剤とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用する場合には、治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること」
さらにシンバスタチンには 10 mg/日を超えないことという用量上限が付きます。「2018年の改訂で併用は自由になった」ではありません。
| 薬剤 | 腎機能に関する記載 |
|---|---|
| ペマフィブラート | 腎機能に関する禁忌なし。eGFR 30 mL/min/1.73m²未満では低用量から開始し投与間隔を延長、最大1日0.2 mg |
| フェノフィブラート | 血清Cr 2.5 mg/dL以上またはCCr 40 mL/min未満は禁忌 |
| ベザフィブラート | 血清Cr 2.0 mg/dL以上は禁忌 |
出典: 各薬剤の電子添文(パルモディア錠は2024年8月改訂 第2版)。フェノフィブラートは後発品(武田テバ)の電子添文で確認したもの。
PROMINENTでは腎有害事象が多く報告されており、電子添文も投与前の腎機能検査を求めています。使える=安全ではありません。(発生率はNEJM本文・補遺が未確認のため数値を示しません。)
高度腎障害・透析を含む第4相試験のAUCτ 幾何平均比 0.92(90%CI 0.62–1.36)は反復投与の話で、電子添文16.6.1の単回投与試験で曝露の増加が認められることとは別の論点です。
出典: Ishibashi S, et al.(PALT02)/パルモディア錠 電子添文
GL2022の「血清Cr 2.5以上でペマフィブラートは禁忌」という記載は2022年10月改訂より前の情報です。現行運用は電子添文(2024年8月改訂 第2版)に従います。
CKだけを追うと見落とします。血清Cr/eGFRをセットで追う設計にします。
| アウトカム | 併用群 | スタチン単独群 |
|---|---|---|
| CK 基準上限の10倍超 | 10例(0.4%) | 9例(0.3%) |
| eGFR低下による減量 | 440例(15.9%) | 194例(7.0%) |
| eGFR低下による中止 | 66例(2.4%) | 30例(1.1%) |
| 一次エンドポイント | HR 0.92(95%CI 0.79–1.08) | |
出典: ACCORD Study Group; Ginsberg HN, et al. N Engl J Med. 2010;362(17):1563-1574.
CK基準値は男 50–200/女 40–170 IU/L。フィブラート併用開始後は初回4週後を目安に確認します。
出典: スタチン不耐に関する診療指針2018
出典: Ansquer JC, et al. Am J Kidney Dis. 2008;51(6):904-913./Ncube V, et al. Ann Clin Biochem. 2012;49(Pt 5):491-493. ほか
出典: Sica DA. 2009/Mychaleckyj JC, et al. 2012/Davis TM, et al.(FIELD)2011/Zhao YY, et al. 2012/Broeders N, et al. 2000
心血管アウトカムのデータがある薬から検討します。ただし用量ギャップと心房細動を同時に説明します。
| 試験 | 主要評価項目 | 心房細動 |
|---|---|---|
| JELIS | 主要冠動脈イベント 2.8% vs 3.5%(19%減, p=0.011) | — |
| REDUCE-IT | 17.2% vs 22.0%、HR 0.75(0.68–0.83) | AF/粗動による入院 3.1% vs 2.1%(P=0.004) |
| RESPECT-EPA | 9.1% vs 12.6%、HR 0.79(0.62–1.00, P=0.055) | 新規AF 3.1% vs 1.6%(P=0.017) |
| STRENGTH | HR 0.99(0.90–1.09) | — |
| PROMINENT(参考) | HR 1.03(0.91–1.15) | — |
出典: Yokoyama M, et al. Lancet. 2007;369(9567):1090-1098./Bhatt DL, et al. N Engl J Med. 2019;380(1):11-22./Miyauchi K, et al. Circulation. 2024;150(6):425-434./Nicholls SJ, et al. JAMA. 2020;324(22):2268-2280./Das Pradhan A, et al. N Engl J Med. 2022;387(21):1923-1934.
用量ギャップ。エパデールの高脂血症における承認1日最高用量は2,700 mgで、REDUCE-ITの用量とは異なります。
対照の問題。REDUCE-ITの対照は薬用鉱物油で、鉱物油群のhsCRPは試験終了時に群間差38.5%でした。RESPECT-EPAは主要評価項目で有意に届いていません(P=0.055)。「25%減る」を単独で断定的に紹介しないのはこのためです。
開始前 → 開始4週後 → 開始後半年に2〜3回 → 以後3〜6か月に1回。血清Cr/eGFRとCKをセットで追います。
この間隔はガイドラインが数値として規定したものではありません。電子添文+動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 BQ21+スタチン不耐に関する診療指針2018を実務的に合成したものです。