医療者向け・一次文献ベース

高齢者のてんかん重積、
どこで麻酔薬・挿管に踏み切るか

分岐の軸は「年齢」でも「入院前ADL」でもなく、発作型 × 意識レベル

まず、実際の管理はどうなっているか

996
前向き登録された
成人の重積
545
難治性重積に進展
(54.7%)
71.7%
難治例のうち
挿管されなかった割合

難治例の 52.7% が良好転帰(mRS 0-2、または入院前と比べ悪化なし)。
出典:Beuchat I, et al. Neurology. 2022(SENSEレジストリ・中欧3か国9施設)

病型ごとに、麻酔薬の位置づけは違う

重積の病型持続静注麻酔薬の位置づけ
けいれん性の難治性重積正当化される
subtle SE(昏睡+発作性脳波)正当化される
NCSE with coma(昏睡を伴う)個別化して判断
NCSE without coma(意識が保たれる)役割は乏しい
焦点運動発作性重積・EPC役割は乏しい

意識が保たれた病型では、転帰を決めるのは発作の持続そのものより病因と併存症
出典:Fisch U, et al. Front Neurol. 2026(スコーピングレビュー)

予後を分けていたのは意識レベル

意識障害あり
33%
覚醒している
8.2%

両側強直間代発作のみで終わった症例では死亡はゼロ。年齢中央値69歳・成人221例。
出典:Leitinger M, et al. Epilepsia. 2019(人口ベース研究)

高齢・ADL低下は差し控えの理由になるか

治療制限の決定
35.7% vs 12%
入院前に機能障害があった群では、
治療制限が約3倍多く行われた
1年後に機能が悪化しなかった割合
42.9% vs 44.1%
それでも1年後の結果は
ほぼ同じだった
1年後の転帰不良と関連した因子オッズ比
既存の、最終的に致死的となる併存症2.92
脳の器質的障害が重積の原因2.75
59歳超2.36
難治性のけいれん性重積2.19
入室時の臓器不全(LODスコア3以上)2.08
入院前の機能障害 = 有意差なし0.61

差し控えの根拠に最もよく使われる因子が、最も予測力が乏しかった
出典:Vieille T, et al. Epilepsy Behav. 2023(けいれん性重積でICU入室した成人499例)

踏み切る前に確認する3つのゲート

1本当に非けいれん性重積か
Salzburg基準の陽性的中率は34%(感度94%/特異度77%)。基準を満たしても3例に2例はNCSEではない。偽陽性の多くは脳症・発作後状態。鎮静で脳症を覆い隠さない
2病因は治療しうるものか
病因別の死亡率は自己免疫性脳炎 14.3%/てんかん 17.2% に対し脳腫瘍 63.6%。適切なASMで58.5%が改善している。
3上流を尽くしたか
第1選択ベンゾジアゼピンの十分量投与は良好転帰のオッズ比2.5。ガイドライン逸脱は難治性への進展と強く関連。最大のレバーは麻酔薬ではなく上流にある

導入すると決めた後の4原則

① 遅らせない
難治性と確定した後の導入遅延は、一貫して転帰不良と関連する
② 目標は発作停止
非低酸素性RSEで burst suppression の上乗せ効果は示されていない
③ 期間は最短に
24〜48時間は専門家合意にすぎず、延長は感染・離脱時発作を増やす
④ 持続脳波で離脱
維持期・離脱期を通じた脳波監視が必須とされる

⏱ 期間の最短化は、そのまま廃用対策である

集中治療関連筋力低下(ICU-AW)は長期不動化と高齢が危険因子で、四肢近位筋と呼吸筋を侵し、退室後2年まで持続しうる。予防の要は早期離床。発作を止めることと廃用を防ぐことは対立しない
また、神経集中治療で事前指示を持つ患者は中央値39%にとどまる。重積が起きてからでは遅く、平時の外来がACPの場になる。

出典(すべてPubMed収載・メタデータ照合済み): Beuchat I, et al. Neurology. 2022;99(16):e1824-e1834./ Fisch U, et al. Front Neurol. 2026;17:1805775./ Leitinger M, et al. Epilepsia. 2019;60(1):53-62./ Vieille T, et al. Epilepsy Behav. 2023;141:109083./ Ulvin LB, et al. Ann Clin Transl Neurol. 2024;11(10):2685-2695./ Uçan Tokuç FE, et al. Neurol Int. 2025;17(2):29./ Hermans G, Van den Berghe G. Crit Care. 2015;19(1):274./ Sutter R, et al. Crit Care Med. 2020;48(8):1188-1195.
※ 引用研究の大半は観察研究であり、難治性重積の無作為化比較試験はほとんど存在しない。 薬剤の用量・投与速度は各施設のプロトコルに従うこと。本図は診療方針を保証するものではない。
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