NST向け臨床サマリー
リフィーディング症候群
拾い方と、始め方
高リスクは NICE CG32 Box 1 で拾う。発症したかは ASPEN 2020 の低下率で見る。
1.拾う ── NICE CG32 Box 1
大基準
1つ以上で高リスク
- BMI < 16 kg/m2
- 過去3〜6か月の意図しない体重減少 > 15%
- 10日を超えてほとんど栄養摂取なし
- 投与開始前の K・P・Mg のいずれかが低値
小基準
2つ以上で高リスク
- BMI < 18.5 kg/m2
- 過去3〜6か月の意図しない体重減少 > 10%
- 5日を超えてほとんど栄養摂取なし
- アルコール多飲歴、またはインスリン・化学療法・制酸薬・利尿薬などの薬剤歴
Box 1 は「refeeding problems の高リスク」を拾うスクリーニング。症候群の診断基準ではない。
2.始める ── エネルギー量
10 kcal/kg/日
高リスクの開始上限。
4〜7日かけて必要量へ
5 kcal/kg/日
BMI < 14、または15日超の摂取ほぼ皆無。
心電図モニタを継続
50 % 以下
5日超ほとんど食べていない人の
最初の2日間(§1.4.5)
重症・外傷で経腸/静脈栄養を要する人も、目標エネルギー・蛋白の50%以下で開始し24〜48時間で必要量へ。水分・電解質・ビタミン・微量元素は最初から全量(§1.4.4)。循環血液量を戻し、水分バランスと全身状態を密に観察する。
3.同時に入れる ── 投与直前〜最初の10日間
| 項目 | NICE CG32 §1.4.8 の目安 |
| チアミン | 200〜300 mg/日 経口。あわせてビタミンB群強力製剤 1〜2錠を1日3回(必要なら静注B群製剤の全量を1日量で)、総合ビタミン・微量元素を1日1回 |
| カリウム | 2〜4 mmol/kg/日 |
| リン | 0.3〜0.6 mmol/kg/日 |
| マグネシウム | 0.2 mmol/kg/日(静注)/0.4 mmol/kg/日(経口) |
開始前に低値を正常化しておく必要はない
原文は "pre-feeding correction of low plasma levels is unnecessary"。補正を待って栄養開始を遅らせず、補正と並行して少量から始める。投与前の血中濃度が高い場合を除いて補充する。
4.見張る ── 発症の判定は ASPEN 2020
| 重症度 | カロリー再開から5日以内の、P・K・Mg のいずれか1〜3項目のベースラインからの低下 |
| 軽症 | 10〜20% の低下 |
| 中等症 | 20〜30% の低下 |
| 重症 | > 30% の低下、または これらの電解質低下による臓器障害/チアミン欠乏による臓器障害 |
絶対値ではなく「低下率」で見る
「基準値を下回ったか」ではなく、ベースラインから何%下がったか。NICE Box 1(=発症前のリスク)と ASPEN(=発症したかの判定)は別物として使い分ける。国内でも、日本版重症患者の栄養療法ガイドラインが、発症が予測される患者への血中リン・マグネシウム・カリウムのモニタリングを推奨している(1C)。
5.現場で多い3つの誤解
| よく言われること | 一次資料はどう書いているか |
| 電解質を正常化してから栄養を始める | NICE の記載と逆。開始前の補正は不要で、補正しながら少量で始める |
| Box 1 を満たす=リフィーディング症候群 | Box 1 はリスクの拾い上げ。発症の判定は ASPEN の低下率 |
| 「超高リスク」という区分がある | NICE は高リスクの1段階のみ。§1.4.8 の "extreme cases" は処方側の但し書き |
体重あたりの量は実体重で計算する前提。個々の患者では腎機能・心機能・投与経路を踏まえて調整します。